鉄道から、ミリタリーウォッチの代名詞へ
ペンシルバニア州で1892年に創業した〈ハミルトン〉のすべての始まりは、懐中時計の製造から。アメリカの鉄道黎明期に正確な時間を測定する方法がない中で、〈ハミルトン〉の高精度な懐中時計がこの問題を解決。その後、鉄道公式時計という称号を獲得。その確かな技術に目をつけたのがアメリカ軍だった。
1917年にアメリカ軍のオフィシャルウォッチサプライヤーとして軍用時計の納入を開始し、ベトナム戦争が続く1966年に「GG-W-113」が誕生した。敵軍からの視認性を下げるために艶消しのステンレススチール。あくまで軍事の任務を遂行するための腕時計であり道具でもあることを象徴するような、日にちの表記なしのシンプルなデザイン、マットなブラックダイヤル。ミリタリー由来の“機能美”が現在も感じられる名作だ。
ちなみにこの時計は“ハックウォッチ”という愛称でも呼ばれる。リューズを引くと秒針を止めることができるハック機構を備えており、戦場で兵士たちが時間を合わせる際に、合図として一斉に「HACK」と声を出していたことに由来する。その当時のデザインからほぼ変わらずに手掛けられているのが「カーキ フィールド メカ」である。
クラシックか、新しい名作か

今回古き良き「カーキ フィールド メカ(以降メカ)」に加え、新たにラインナップに加わったのが「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ(以降パワーリザーブ)」。2つのモデルを並べると、わずかながら印象が違うのに気づくだろう。右が「メカ」で、左が新モデルの「パワーリザーブ」。時計一本ずつにそれぞれの魅力があるように、この2本にも個性がある。
新作に搭載された「パワーリザーブインジケーター」。これは一回の手巻きで80時間動くその稼働時間を表示する機能だ。これまでのモデルに比べ、よりメカニカルなギミックが追加された。「F」で満タンを、「E」で空であることを示している。ニッチな仕様は時計好きの心をくすぐるはずだし、デザインとしても秀逸だ。
サイズもよく比べると異なる。「パワーリザーブ」はインジケーターを搭載するにあたり、ムーブメントも一から開発。インジケーターの機構が加わった分だけケースが大きくなり、径は40mmで、厚さは11.95mm。一方の「メカ」は、径が38mmで、厚さが9.5mm。「パワーリザーブ」の方が、その分、見た目のインパクトがある。
ミリタリーウォッチの機能を色濃く残したオリジナルか、よりメカニカルな新作か。甲乙つけ難い選択だが、ライフスタイルによって考えるのも面白い。
新作であれば、「カーキ フィールド」のデザインにも惹かれて、駆動時間を意識できるプロフェッショナルな仕事に取り組む人にも向いている。一方で「メカ」は小ぶりな文字盤に、必要最低限な機能が生み出すデザイン性、そしてミリタリーウォッチとしての深い歴史がある。ゆえにさらっとさまざまなファッションに合わせる汎用性もありつつ、背景に物語のあるアイテムとして奥深さをもたらすことができるだろう。
NATOストラップにもさまざまな展開があるのも魅力だ。カーフレザーのNATOストラップであれば、質実剛健な雰囲気を加速させてくれる。さらに、「パワーリザーブ」はステンレススチールのブレスレットのモデルもある。スポーツウォッチのようで、印象もガラリと変わる。そんな目新しい汎用性も新登場の「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」には備わっているようだ。
