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〈グッチ〉の夢の研究所。フィレンツェにある「ArtLab」に日本のメディアが初潜入リポート!

イタリア・フィレンツェにある「アートラボ」は、伝統的な職人技術を継承し、未来のテクノロジーを開発する研究施設。その全貌が世界でも限られたメディアに公開された。日本では本誌独占取材!

report: Kiyoe Sakamoto (Milan) / edit: Naoko Sasaki

GUCCI ARTLAB

2018年に開設された「アートラボ」は、グッチのレザーグッズとシューズのプロトタイプやサンプルをインハウスで製作する施設。技術の習得、アイデア創出のためのワークショップなど、クラフツマンシップの未来を見据えた実験の場であり、研究所でもある。3万7000㎡の敷地に、1000人以上が働く。

外壁には〈グッチ〉がコラボレートしてきたアーティストたちの作品が描かれていて美術館のよう。

企業秘密が満載の施設だけに、関係者でも内部に入れることは稀。本誌は日本のメディアとして初潜入した。施設内に一歩入るとエントランスやミーティングルームはポップな色柄で埋め尽くされていて、職員のためのジム、カフェやレストランもある。どの場所もグッチショップさながらのモダンさだ。

MAISON DE L’AMOUR


白衣もモダンな“愛”のファクトリー

未来の工場を思わせるラボ。MAISON DE L'AMOURとプリントされた職人の白衣もポップでグッチらしい。

「美しい環境で、美しいものに囲まれて、美しいものを作る」を実践している印象。ファクトリーはハンドバッグ、ラゲージ、レザーグッズ、ベルト、シューズはウィメンズ、メンズなどの部門に分かれている。

プロトタイプとサンプルの製作を同じ敷地内で実施することで、デザイナーの思うようなデザインイノベーションと実験がクラフツマンシップと融合し、製品に反映できるようになっている。すべての工程がスムーズに流れるよう隣接された配置になっていて、シューズの型を作っている隣に、そのサンプルを作れる場所があり、問題が起きたらすぐに解決できる距離で職人さんたちが働いている。

「デザイナーの理想をアウトプットできる、世界で唯一の場所」であり「デザイナーが夢を持って訪れ、実際の製品を持ち帰る」ことができるという。

ほかにも、新素材やメタルハードウェア、パッケージの研究開発、環境試験や物理化学試験のテストラボ、アクセサリーのラボ、シューズの木型とヒールの開発が行われており、バンブールームでは、職人がバンブーをハンドメイドで曲げる作業なども。

ÉCOLE DE L’AMOUR

伝統と技術を次世代に受け継ぐスクール


また、グッチの職人たちの技術を未来に受け継ぐことを目的にした教育プログラム「École de L'Amour」を開設し、3つのプログラムを開催。レザーグッズ製品の生産工程を習得する「クラフトマンシップスクール」のほか、製造オペレーターを養成するコース、従業員に技術トレーニングを提供する社内プログラムがある。講師は、専門の職人や教育のために時間の一部を割いているマネージャー、退職した元社員などが務め、2019年の開始以来、800人以上が教育を受けているという。

広々としたスペースは白を基調としたクリーンな環境。同じフィレンツェにあるグッチ ガーデンやアーカイブの収蔵拠点しかり、すべてがアートのよう。そこで働く人や学ぶ人たちがすごく幸せそうに感じられたのが何より印象的だった。

SUSTAINABLE

未来のためのイノベーション最前線

そして、〈グッチ〉が今最も注力しているのがサステイナビリティ。プロセスとテクノロジーの革新のために研究が繰り返され、サステイナブルな素材や技術を開発することで、新しいプロトタイプや製品に反映する場所にもなっている。サステイナビリティの研究は環境損益を計測しながら行われる。製品は循環型の原則に沿ってデザインされ、イノベーション、新しいプロセスの模索、再生可能素材の選択を促進している。

Gucci Off The Grid
2021年に発表された新素材DEMETRA(デメトラ)を取り入れたスニーカー。非動物由来のサステナブルで再生可能なバイオベース原料と、効率的な製造プロセスによるエコイノベーションから生まれた。

2020年発表の「Gucci Off The Grid」はすべてのアイテムに再生素材、オーガニック素材、バイオベースなど持続可能性の高い原料や素材を採用。その後も継続的に環境に配慮したモノ作りを続けていて、常に未来のクラフトマンシップを模索している。