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白樺の林から、時を刻む。〈グランドセイコー〉Evolution 9 Collection

〈グランドセイコー〉は2020年、新たなデザインコード「エボリューション9スタイル」を確立した。鏡面を多用した既存の外装とは真逆、筋目仕上げを主体とした陰影で力強くも美しいフォルムを際立たせ、さらに装着感と見やすさを向上させた。

photo: Masahiro Okamura / text: Norio Takagi

ダイヤルに浮かぶ繊細かつ複雑な凹凸模様は、機械式〈グランドセイコー〉が生まれる岩手県の景勝地、平庭高原に広がる白樺(しらかば)林をモチーフとする。優れた匠の技で生み出されるダイヤルの下には、〈グランドセイコー〉の自動巻きキャリバー9SA5が潜む。ゼンマイを収めた香箱が2つ備わり、独自の高効率なデュアルインパルス脱進機とも相まって80時間駆動を実現。海外からも高く評価される革新的なムーブメントは同時に薄型設計でもあり、ケースに収める際、裏蓋側に寄せることを容易にする。結果、時計全体が低重心となり、腕の上で安定する。

〈グランドセイコー〉は1960年の誕生以来、「正確さ」「見やすさ」「美しさ」を追求してきた。「正確さ」を担うのは、高性能ムーブメント。そして「美しさ」と「見やすさ」を実現するため、1967年に独自のデザインコード「セイコースタイル」を確立した。歪みのない鏡面を主体としたケースによって目指したのは、「燦然と輝く腕時計」。そしてブランド誕生60周年を迎えた2020年、新時代を開く新たなデザインコード「エボリューション9スタイル」を定めた。ここでは「審美性」「視認性」「装着性」の3つの進化が図られた。審美性の進化においては、筋目を外装仕上げの主体にすると決め、そこに鏡面を連ねて光と影の間にあるグラデーションを表現し、日本らしい奥ゆかしき美観を創出した。

〈GRAND SEIKOE〉volution 9 Collection
金属盤に押し当てて仕上げる「ザラツ研磨」による歪みのない鏡面を、筋目仕上げの随所に注(さ)し込むことで、光を美しく流す造形に。鏡面と筋目の境界が明確に分けられている。

そしてエボリューション9スタイルと同じ2020年に誕生したキャリバー9SA5がもたらす「低重心のケース」によって、装着感の進化はかなえられた。加えてブレスレットもケース径の2分の1以上の幅にまで拡張し、しっかりした厚さを持たせることで既存モデルよりもホールド感を大幅に向上させている。

さらにダイヤルに目を移せば、各インデックスは深い溝を入れた多面体で、12時のインデックスはより大型化されていると気づく。また時針を、分針より明確に太くした相乗効果で視認性を進化させている。

正確で見やすく、美しく、さらに着け心地がいい。エボリューション9スタイルによって、〈グランドセイコー〉は大きな進化を遂げ、腕時計としてのさらなる高みに至った。

〈GRAND SEIKOE〉volution 9 Collection
メカニカルハイビート 36000 80Hours/SLGH005 Cal.9SA5/自動巻きメカニカル(手巻き付き)。ケース・バンドはステンレススチール。40㎜。日常生活用強化防水(10気圧)。1,155,000円。