500年の東西文化交流が育んだ世界遺産都市マカオ
マカオの面白さは、異なる文化が当たり前のように共存していることにある。たとえば、17世紀のポルトガルの遺跡〈聖ポール天主堂跡〉を見ると、キリスト教建築に中国や日本の装飾が混じっている。
セナド広場周辺では、ポルトガル様式の建物で中国系住民が生活し、西洋カフェと中国茶の店が隣り合う。石畳の通りを歩けば、エッグタルトのような東西文化が融合して生まれた名物に出合うことができる。
こんな文化の重なりが500年続いてきた街に、その伝統を受け継ぐ新しいタイプのホテルがある。〈グランド リスボア パレス リゾート マカオ(Grand Lisboa Palace Resort Macau)〉だ。
約7万平方メートルの敷地に、〈グランド リスボア パレス マカオ〉〈ザ・カール・ラガーフェルド〉〈パラッツォ・ヴェルサーチェ・マカオ〉の3つのホテルが一体になってそびえ立つ。
敷地内には、26のレストラン&バー、100を超えるショップが並ぶモールと、3800平方メートル以上の多目的スペースがあり、それぞれのホテル棟にはスパやジムも入っている。
建築的にも見どころが多く、ヨーロッパの宮殿建築からインスピレーションを得たイベントスペース「グランド・パビリオン」や美しいバロック式の庭園「ジャルディム・セクレト」を併設する。
〈グランド リスボア パレス リゾート マカオ〉がいわゆる統合リゾートと違うのは、エンターテインメントだけでなく、マカオの文化的アイデンティティを現代風にアレンジした文化施設としてつくられていることだ。

アートに包まれて泊まる
3つのホテルの中核を担う〈グランド リスボア パレス マカオ〉は、1350室すべての客室がちょっとしたギャラリーになっている。さらに、廊下やエレベーターホールなど、いたるところにマカオのアーティストによる現代作品が配されており、宿泊そのものがアート鑑賞となる世界でも稀有な環境だ。
2025年にはForbes Travel Guide Five-Starも取得しており、品質の高さも折り紙つきだ。
客室は、モダン・シノワズリ様式で、中国の伝統装飾と西洋美学をミックスし、マカオらしい文化融合を空間で表現している。
60平方メートルのデラックスルームは、〈グランド リスボア パレス マカオ〉のコンセプトがもっとも分かりやすく表現された場所。天井には17世紀ヨーロッパ宮廷建築を思わせる花と葉の漆喰装飾があり、バロック様式の重厚さを感じるが、圧迫感はない。
室内はニュートラルトーンでまとめ、ターコイズブルーのソファがアクセントカラーになっている。幾何学パターンのカーペットが空間にリズムをつくり、モダンで洗練された印象だ。
アーチ型の大きな窓からは、コタイ地区の街並みやリゾートの庭園が見え、古典装飾と現代インテリアが自然に調和した、東西文化融合というテーマを肌で感じられる空間になっている。
このアート体験をより深く楽しむために、ホテル内のアートギャラリー「ザ・リスボア、マカオの物語」は見逃せない。たんなる装飾ではなく、500年以上の東西文化交流史を現代アートで理解するためのこの展示は、マカオの歴史的建造物、民俗文化、街の記憶、伝統工芸を通じて、街のアイデンティティ形成過程が分かるようになっている。
ポルトガル料理から童話の世界まで。食を通じた文化体験
多彩なダイニングのなかでも注目したいのは、〈ザ・カール・ラガーフェルド〉3階にあるポルトガル料理を現代的に解釈したレストラン〈メーザ バイ ジョゼ・アビリス(Mesa by José Avillez)〉だ。
「メーザ」はポルトガル語で「テーブル」。人が集まり、料理を分け合い、文化を交換する場所という意味を込めた。内装は、黒・白・金の配色に、中国の鳥かご風照明や格子装飾の椅子で東洋の要素をプラスしている。
料理は、伝統的なポルトガル料理の食材を現代的な技法で仕上げる。シグネチャーは、ポルトガル料理の定番をアレンジした「カリカリに焼いた子豚、豚トロとコリアンダー、オレンジクリーム添え」。「マグロのタルタル・コーン」は海洋国家ポルトガルとアジア食材の創作料理だ。デザート「三匹の子豚の一匹」は見た目も楽しい童話をテーマにしたスイーツで、視覚的な驚きと上品な甘さが印象的。
隣接する〈メーザ バー〉では、マカオの歴史・文化からインスピレーションを得たオリジナルカクテルを楽しむことができる。中国とポルトガルの文化が融合したこの街ならではの味わいを、お酒でも表現している。
さらに、庭園「ジャルディム・セクレト」では4月から「Adventures of ALICE」を期間限定開催中だ。芝生迷路、パビリオン、列柱廊で構成された空間で、童話の世界を現実的に楽しむことができる。
〈グランド リスボア パレス マカオ〉西ロビーに位置する「GLP Lobby Lounge」では、アリスをテーマにした食事も提供する。
アリスをテーマにしたアフタヌーンティーでは「The Wonderland」など童話の世界観を表現したドリンクや、かわいらしいスイーツの「Mini Mushroom Magic」など、物語のキャラクターを模したメニューも用意されている。マカオ料理・アジア料理・西洋料理をミックスした終日メニューと合わせて、料理でこの街の文化的多様性を味わえる仕組みだ。
ここでは、マカオという街が500年かけて育んできた東西の文化的な融合を、現代の形で体験できる。たんなる宿泊ではなく、知的で刺激的な文化体験ができる。それが、〈グランド リスボア パレス リゾート マカオ〉の価値なのだ。