有縁(学芸大学)
一筋に純米燗酒推し、9席の硬派
再開発が進む高架下の最終地点、店名が記された白く大きな暖簾(のれん)が目印だ。「日本酒の店です」という口上で品書きの説明が始まる通り、純米酒を柱とした日本酒が主役。ワインは一切置かないという選択が清々しい。
主の蝶野慶一さんは、日本酒に魅せられ飲食業を志した人。冷やでも旨い爽やか系から、酸味も旨味も強いタイプまで、まずは日本酒から揃えた。
だしを味わうお浸しに始まり黄身醬油を添えたマグロ刺しと、淡麗から濃厚に移行する酒肴は、それに合わせて決めたものだ。シュウマイは羊肉で、クリームコロッケはサケでと、故郷・北海道の味も織り交ぜている。
独立前は蕎麦居酒屋〈蕎麦前山都〉で統括役を務めた蝶野さん。ほかカフェなど幅広い業態を経験した。共に店に立つ石川健太さんは大学の同級生で、編集やデザイン畑の出身。品書きは硬派だが、丁寧な接客から地域の場としての店作りまで、2人の知見が生きていて心地よい。