Eat

グルマン温故知新:高円寺〈極彩 椿〉フリースタイルで異彩を放つ、若き有望株

テーマごとにレストランを紹介するブルータスの人気連載。今回のテーマは「都心を少しだけ外したコース中華」。価格が何かと高騰している昨今。そうした中「旨い料理を手頃な価格で」と山手線外に店を構え、既成概念にとらわれないアレンジで魅了する新店がオープン。オーナーは名店で腕を磨いた若手だ。チャイニーズの頻度が上がるはず。

photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Kume Mamiko

連載一覧へ

極彩 椿(高円寺)

フリースタイルで異彩を放つ、若き有望株

都内のミシュラン1ツ星店や京都の予約困難な名店を経て、31歳で独立した臼井雅道さん。一流店の技術や姿勢を受け継ぐハイブリッドタイプかと思いきや、若いながらも独自の理論を確立した個性派。「店の味にはそれぞれ物語があるので真似はしません。

理(ことわり)を料(はか)ると言うように、旬の食材を使った合点のいく料理を」と、あれこれ手をかけながらも、味とビジュアルはすっきり仕上げるのが身上だ。

例えばエビチリなら甲殻類のビスクをイメージし、殻で取っただしをソースに。身は硬くならないよう衣をつけて風味よく揚げ、エビの持ち味を一皿に還元する。生命線という麻婆豆腐は黒毛和牛の塊肉を手切りし、ラードは炒め油に使用。肉の旨味を凝縮させ、リッチで中毒性のある味わいを生み出す。

6席の店内は満席続き。それでも「わざわざ足を運んでもらう場所なのでおいしいものを出さないと二度と来てもらえない」とストイック。信頼していい。

連載一覧へ