街を歩けば、いい窓に出会える。季節や時間で変化する街の窓の楽しみ方
話しを聞いた人:瀧 亮子(編集者)
ビル、集合住宅、レストラン、百貨店、駅の待合室、明かり採りのため天井に付けられた窓……。街をよく観察すると、毎日なにげなく通っていたあの場所にも光が差し込む窓があることに気がつく。
「街の窓の魅力は、用途も形も雑多であること。バルコニーや雨よけの、面格子など装飾によって表情も豊かになります」。
そう語るのは『いいビルの写真集 WEST』など、ビル好きに人気の書籍を編集する瀧 亮子さん。出張や仕事で知らない街を回るときには、必ずビル探しや街歩きのための時間を割くという瀧さんに、街中でいい窓を見つける方法を指南してもらった。
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板チョコのような模様がかわいい渋谷・道玄坂上の雑居ビル。
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真ん丸の窓が規則正しく配置された板橋のマンション。
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池袋にある鉄道高校の窓。電子回路や路線図を彷彿とさせる。
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晴海のホテルの出窓。まるでゲームボーイやブラウン管テレビ。
「素敵な窓を探すコツは、行きと帰り、別の時間に通ってみること。窓の魅力が最大限に発揮される時間があるからです。設計者が意図した美しさだけでなく、遮熱や目隠しのための色ガラスの窓から漏れた光、ビルの窓に水面のように青空が映る瞬間にも心を奪われます」
では、実際にいい窓を探すには、どんな場所に行けばいいのだろう。
「面白いビルの窓に出会いたければ、まず戦後に産業が発展した街や企業の城下町を探してみましょう。ほかにも都道府県で2〜3番目に大きい都市には、再開発を免れた個性的なビルが現存していることも多いです。いいビルがいいビルを呼ぶということもあり、巨匠が設計した役所がある街にはかっこいいビルが残っていることも。名建築詣でのついでの街ぶらもおすすめです」
高度経済成長期のビルは、水平連続窓や角丸の窓、9階建てのこぢんまりとしたビルが多い傾向に。ビルの年代を見ることも、街の窓を観察するときの一つの視点になる。
外からエスカレーターや階段が見えるような、人の気配がする窓が好きだという瀧さんは、定点観測的にも街の窓を楽しんでいる。
「近所の通りに面した角丸の窓に、正月には小さな凧、梅雨には折り紙で作ったアジサイが飾られているのに気づきました。ある日、家の方に尋ねたところ、かつて美容室を営んでいた名残の飾り窓だと教えてもらいました」
ガラス越しに、人の気配や労働、営みを感じることができる窓は、私たちに光を、四季を、時間を知らせてくれる。窓に目を向けてみたら、これまでと街の景色が変わり、いつもよりほんの少し街を歩くのが楽しくなるはずだ。
一見不規則なようで、実は規則正しく並ぶ窓。曙橋の集合住宅。
クラシックなガラスブロック窓が映える歌舞伎町の雑居ビル。
渋谷のマンション。アールと四角の組み合わせがキュート。
なぜか最上階だけに窓が設けられた赤羽のホテル。