タイラー・ザ・クリエイターにスペシャルインタビュー。「センスがいい」ってなんですか?

photo: Kohei Kawashima / text: Shimpei Nakagawa

BRUTUS「センスがいい仕事って?」特集の特任編集長、ラムダン・トゥアミが一目置く存在がいるとのことでLAに呼び出しがかかる。ファッションブランドも経営するヒップホップアーティストのタイラー・ザ・クリエイターに会うという。アルバム発表直後、クリスマス直前。人だかりを避けるため歩きながらの“グッドテイスト”談議が始まった。

本記事は、BRUTUS「センスがいい仕事って?」(2025年2月15日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

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あらゆるビジネスがクリエイティブなものになるためのヒントとして、ラムダン・トゥアミ氏(以下ラムダン)がキーワードに挙げたのが“グッドテイスト”だった。まずはその言葉の認識を深めることから始めたい。一曲でも楽曲を聴き、一つでもミュージックビデオを観れば、誰しもがクリエイティブだと認めるであろうタイラー・ザ・クリエイター(以下タイラー)が先頭バッターだ。好き嫌いの判断基準、ファッションセンス、ビジネスに取り組む姿勢、そして日本の雑誌がなぜ好きかまでを語り尽くす。

ラムダン

タイラーにとって、グッドテイストやバッドテイストってなんだと思う?

タイラー

良いとか悪いとかじゃなくて、ただ俺に合わないものがあるって感じ。俺は何かに「それは好きじゃない」と思うけど、だからといってその人のテイストが悪いわけじゃない。彼らは俺のセンスをひどいと思うかもしれないしね。そして、「グッドテイスト」というものがあるとすれば、それはセンスのいいチョイスの連なりをまとめる傘のようなものだよ。

例えば、5台の車を持っていて、それぞれが素晴らしいスタイル、ナイスなカラーリングに、いいホイール、いい内装で、それぞれの車が隣の車とも調和している。それがグッドテイストだと思う。いい選択の集合体なんだと思うよ。

「グッドテイストとは、センスのいいチョイスをまとめる傘のようなものなんじゃないかな」

タイラーのよく知るエリアだという住宅街を一回り。特命編集長のラムダン氏が自らレコーダーを手に、インタビューを行う。

スタイルに影響を与えたストリートカルチャー

ラムダン

タイラーのスタイルが長い年月をかけてどう変わってきたのか。どうやって生まれたのか知りたい。タイラーのセンスは常に進化し続けているね。

タイラー

まず第一に、この町だね。ロサンゼルスが俺のセンスに与えた影響は絶大だよ。2つの世界が俺の中にあった。

一つは……。

タイラーのミュージックビデオに車を貸し出したのが縁で知り合ったという2人。数年ぶりの再会に握手を交わす。
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