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虫を魅力的に見せる。グラフィックデザイナー・佐藤卓が作った、デザインのいい標本箱

かっこいい標本箱が欲しい、虫がより素敵に見える箱が。そんな趣味家の憧れを実現するべく、虫好きで知られるグラフィックデザイナーの佐藤卓さんに相談してみると、見たことのない「円形標本箱」が完成した。


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photo: Keisuke Fukamizu / text: Masae Wako / edit: Shogo Kawabata

虫を魅力的に見せるのはどんな標本箱だろう。密閉性が高く昆虫の保存に優れたドイツ型の箱や、丈夫で軽く持ち運びがラクな紙製など、機能に秀でた標本箱はあまたある。ところが、虫を美しく飾れてインテリアとしても楽しめる、「デザインのいい標本箱」が見つからない。

それならオリジナルで作ろう、と虫好きのグラフィックデザイナー、佐藤卓さんに相談した。

「僕が思う虫の魅力は、なんといっても造形です。体全体のフォルムがカッコよく、脚や翅(はね)の構造も精密な昆虫は、いわばプロダクトデザインのお手本。関節を眺めているだけでも面白いんです。例えば、虫の体をばらばらにして解剖図のように飾る“分解標本”を作るのはどうでしょう」

この新鮮かつマニアックな名アイデアを実現すべく、標本作りのプロにも協力を仰ぐことにした。声をかけたのは昆虫標本作家の福井敬貴さん。2019年に佐藤さんが企画した『虫展ーデザインのお手本ー』 でも、標本制作に関わった達人だ。

福井さんが用意した標本は、佐藤さんが今、最も興味を持っているフンチュウ。頭部、胸部、腹部、触角、前脚、中脚、後脚……と分解したものを見て、佐藤さんはひらめいた。「円形」だ!

「フンチュウの丸っこい形によく合うし、円は中心が取りやすいから虫も配置しやすい。円形標本箱なんて今まで見たことがないけれど、福井さんなら自由な発想でレイアウトしてくれそうです」

こうして完成したのは、大中小3サイズの「円形標本箱」。素材は湿気に強い桐の積層材で、木工職人の手作りだ。気軽に虫を替えられるよう、ガラスの蓋は取り外し式。蓋と本体を留める小さな木製ピンが、いいアクセントになっている。

さっそくレイアウトを始めた福井さんいわく、「直径21㎝の中サイズには分解した標本を並べ、直径14㎝の小サイズには元の形がわかる標本を1頭だけ。円形だとポツンと飾ってもカッコいい。余白のある配置がバシッと決まるのは魅力的です」。

直径34㎝の大サイズには、大小のフンチュウをランダムに。フレームの内側に余白を作ることで、額装されたアートピースのようになった。まさに見たい、見せたい、飾れる標本箱だ。

「円は人が覗き込みたくなる形でもあるんですよ」と、完成した分解標本を覗き込む佐藤さん。「部屋に飾りながら脚の形や関節の付き方の違いをじっくり観察できるなんて、たまらなくうれしい。昆虫の新たな魅力とも出会えそうですね」

標本制作:福井敬貴

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