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GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーが絵本に込めた思いとは?音楽一つでは足りない“何か”を求めて

叫びのような、祈りのような、真っ赤な魂の響きは、音楽シーンの光と言っていいだろう。だが、マヒトゥ・ザ・ピーポーの活躍はそれだけにとどまらない。今年、3年ぶりとなるアルバムに続き、絵本を上梓、初監督作品の公開も待ち受ける。「散らばった創作物たちが星の座標のようにつながって、侵食し合い、もう一つの立体的なイメージを生み出していく。扱える速度やアクセスできるポイントは媒体ごとに違うから、何か一つで今の自分のすべてを見せ切るには足りないのかもしれません」

photo: Kazuharu Igarashi / text: Asuka Ochi

世界の正しさを疑うことから始めてみる

ひどい言葉で人を傷つける。色が違うと言われ人をぶん殴る。「ろうやで はんせいしなさい」と言い放つおまわりさんに、彼らは原因となった「ことば」や「いろ」も逮捕してくれという。そうして物語の最後には、おまわりさんも含めた人間と世界のすべてが閉じ込められてしまうのだ。2年をかけて荒井良二の絵で完成した『みんなたいぽ』。対象年齢0〜100歳を謳う絵本は「当たり前」を揺さぶる。

「大人は“こうでなければならない”という常識を勝手に積み上げていく。でも、そうしてルールを作り出すことで切り捨ててしまっていることや、見ているのに通り過ぎてしまうことってたくさんあります。一方、子供の興味というのはあらゆる方向に開かれていて、たとえ目的地があっても、目の前に咲いているタンポポに目を奪われて足が止まったりする。心が動いたものを選べていた頃の記憶というのは誰しもが持っていて、その頃の自分として本を見てほしいというのもあるし、子供から、年を取って死の世界に入り、また生まれ出る人にも届けたい。歌った瞬間に過去になっていくライブと違って、タイムカプセルのように時間をかけても許されるメディアだからこそアクセスできることもあるなと」

GEZAN・マヒトゥ・ザ・ピーポー

孤独、差別、貧困……それらの境界は、大人が決めた危うい正義に支配されてはいないかと絵本は問いかける。そしてあらゆる何もかもを呑み込んだラストシーンの球体は、そんな混沌すら閉じ込めて美しく輝くのだ。

「例えば時間一つを取っても、一秒一秒正確に刻まれている時もあれば、ゆっくりと移り変わる季節、生涯という年月もある。同時に抱えている時間の、どのレイヤーを選ぶかで立体感が変わる。クソみたいな時代にチューニングを合わせて寄り添うのではなく、そこからどう逸脱し、何を切り拓くか。今の自分の気持ちがどんなところに向いているのかということと解像度高く向き合いたいですよね。これまで許されていなかった人の心のあり方に輪郭を与え、自分のことや自分のような人のことを許したいという気持ちもあります」

『みんなたいぽ』
GEZANのフロントマン、マヒトゥ・ザ・ピーポーによるテキストに、『たいようオルガン』『あさになったので まどをあけますよ』などの作品で世界的な評価を得る絵本作家の荒井良二が絵を添えた初の共著絵本。おまわりさんがみんなをたいほした先に待っていたのは?
ミシマ社/2,200円。