教えてくれた人:新井聡子(〈four peas flowers〉主宰)
植物を種から育てる。
スロー・フラワーという言葉をご存じだろうか?
花の地産地消を応援する取り組みとしてアメリカで始まったムーブメントで、地域経済とエシカルな生産者を応援する運動として、欧米を中心に世界各地に拡大しつつある。
神奈川県旧藤野町で花農家〈four peas flowers〉を営む新井聡子さんは、そんなスロー・フラワーの考え方に共感し、季節に合わせた花作りをしている。新井さんが、今の時代に合ったガーデニングとしておすすめするのが、種から育てる植物の楽しみ方だ。
「ガーデニングというと、すでに咲いている花や草木の苗を買ってきて植えるのが一般的だと思います。でも、植物をゼロから育てると、また別の楽しみがあると思うんです。
うちの畑では、農薬や化学肥料を使わず、環境になるべく負荷をかけない方法で季節の花を毎年種から育てています。ローカルで供給するサステイナブルな花卉栽培を目指して、100%露地栽培です。
雨が降ると一気に枯れてしまったり、予定通りに花が咲かなかったりと、露地栽培は本当に大変。だけど種から芽が出た瞬間が、一番アガるんです!」と、花のことを話す新井さんは実に楽しそう。
たとえ広い庭がなくても簡単にはじめられる、と提案してくれたのが卵のパックを利用した栽培方法。
「使うのは、再生紙を利用した紙パック。ガーデニング用の土を入れて、種を植えるだけ。ある程度生長して、双葉から本葉が育ったら、紙パックのまま庭やプランターに植え替える。
再生パックは土に還るので、そのまま植えてOKです。あとは天気に任せて、自然の力を信じて見守るだけ」
卵パックで、
セリンセを育ててみよう。
花が咲いたら、切り花にして好きな花瓶に飾るもよし。けれど上手に花が咲いたら、すべて切らずにぜひ試してほしいことがある、と新井さん。
「花が咲き終わったあとの種も楽しみの一つです。枯れた花をそのまま置いておけば、種がこぼれて、来季にはこぼれ種で自生した花が、きっと元気に花を咲かせてくれます。
こぼれ種で咲いた花は、苗から植えた花よりも発芽が早いし、種としても断然強いんです。これならズボラでも楽しめますし、続ける喜びも味わえます。
ダリア、ジニアは育てやすい人気種。セリンセ、ニゲラ、ブプレリウム、矢車草、ムギワラギク、スカビオサ、ケイトウやアマランサスなどは初心者でも育てやすく、種を取りやすいと思います」
市場に出回る花とは一味違う、スロー・フラワー。ホントの旬を感じられる花のある暮らしを目指して、さっそく種を蒔こう。
こぼれ種が芽吹く、
新井さんの農園。
なだらかな丘陵地に広がる200m2ほどの畑。標高が高く冷え込みも厳しいが、南東に拓けた日当たり抜群の土地で少量多品目の花々が育つ。収穫用の花に紛れて、こぼれ種で育った花も自然のままに根づいている。