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〈vault room〉から生まれる新しいコミュニケーションの形

SNS界隈で密かに騒がれているゲームコミュニティがあるらしい。そんな噂を聞きつけて、拠点となる秘密基地に潜入してみた。〈vault room〉と名付けられたその部屋は、ゲームの世界に入り込んだようなサイバーパンクな空間が広がっていた。

Photo: Junmaru Sayama / Text: Shigeo Kanno

SNSで話題
招待制ゲームコミュニティ

年齢を問わず、オンラインゲームにハマるユーザーは、年々増加している。それらは、大小さまざまなコミュニティを形成し、よりディープでコアな世界を広げている。

今回、ピックアップするのは、SNSなどで話題になっている〈vault room〉だ。ここは、2020年にスタートした東京発の完全招待制の秘密基地で、一般の入場は不可。それでも、YouTuberやVTuberをはじめ、ファッション、音楽、芸能などの業界人が集い、〈VCC APEX〉という独自のコミュニティゲームイベントを定期的に開催していることもあり、ゲーム好きの間ではすでに知られた存在に。


「〈vault room〉は、ゲームを楽しむ場ではあるのですが、そもそもは友達たちが楽しく集まれる場所が欲しくて立ち上げました。配信者の背景をカッコ良くしたかったので、現代アートやフィギュアなども飾っています。都内2カ所と福岡にもスタジオをつくりました」と答えてくれたのは、オーガナイザー役の土井郁輝(ゆうき)さん。

確かに、彼らが手がけた秘密基地のようなスタジオには、武田鉄平やTIDEなど注目のアートや、レアなフィギュアが並ぶ。ハイスペックなPCと配信セットが完備され、PC環境が自宅に整わない人でもスタジオに来れば、思う存分遊べるというもの。


「〈vault room〉を利用するにあたって、本当に楽しいコミュニティであってほしいので、金銭は絡まないようにしています。あくまでもゲームを通じてワイワイするのが楽しいんです。外では会ったこともない30代と10代が、年齢や肩書を飛び越えてオンライン上で普通に会話をしていたり、プレイヤー同士で仕事の相談をしたり、今までになかったコミュニケーションの形がここでは普通に起きているんです」

共通言語が生み出す計り知れないパワー。

アパレルは数分で即完売

人気ゲーム、Apex Legends™️が好きな人なら分かるだろう。〈vault room〉は、“鍵を持った人だけが入れる秘密基地”という意味。一般の人には、ほぼ入れないクローズドなコミュニティではあるが、その動向に惹きつけられ、いち早く情報を得ようとするフォロワーは多い。ツイッターのフォロワー数は7万人を超え、それを裏付けるかのようにオリジナルのアパレルは、SNSでの告知後、わずか数分で完売するという人気ぶりだ。

有名ゲーム配信者や芸能人が一同に揃い〈VCC APEX〉に参加するというプレミアムな一面もあるが、世界的なオンラインゲームカルチャーのリアルを感じられるのは、まさに〈vault room〉の魅力だろう。

ゲームという共通言語を持つメンバー同士が自然発生的につくり上げたコミュニティは、初めからビジネス目的で発生したコミュニティよりも面白みも広がりも大きく盤石だ。さらにいえば、それこそがサブカルチャーとしての力の源である。

対面しないからこそゲームに集中し、最大限の楽しみを共有し、意気投合する。そんなオンラインならではのコミュニティのあり方が、もう日常的に始まっているのだ。