“Future is Unwritten”、未来はまだ書かれていない
——まずは、マークさんとの出会いから教えてください。
フューチュラ
マークの存在はずっと昔から認識していました。ただ、個人的な付き合いができたのは、4、5年前の話。アートを通じて恵まれない地域の若者をサポートする〈フリー・アート・ニューヨーク〉という団体があるのですが、初めてちゃんと言葉を交わしたのは、そこが主催するイベントに参加したときです。当時からマークはブランド40周年をどう迎えるか考えていて、何か一緒にできるんじゃないかと話したのが、今回のプロジェクトの始まりでした。
——作品をアイテムに落とし込む過程では、2人の間でどんなやりとりがあったんですか?
フューチュラ
最初、僕はたくさんいるコントリビューターの一人でしかなく、Tシャツかバッグを一点作るだけだと思っていました。にもかかわらず、今回コレクションと呼べるまでのアイテム数を展開することができたのは、マークが彼ならではの寛容さで「もっとやろう」と言ってくれたおかげ。デザインに関しては、僕が提案するとマークがアイデアを出してくれて、それを僕も打ち返すという友好的な雰囲気の中で進んでいきました。僕の世界をマークが広げてくれるような、そんな時間でしたね。
——フューチュラさんのアーティストとしてのキャリアは〈マーク ジェイコブス〉よりさらに長く、約50年にわたります。ニューヨークのストリートでの活動を始めた1970年代と比べ、グラフィティをめぐる状況は変化したと感じますか?
フューチュラ
変わったところもあれば、変わらないところもあると思います。グラフィティというものはそもそも違法行為として始まったわけです。ところが、今ではアートとして認識され、展覧会が開催されるまでになりました。それは90年代にグラフィックを始めたバンクシーやカウズの活躍の成果なわけですが、おかげでグラフィティという同じストーリーを共有するさらに若い世代も一緒に成長できる環境が整いました。
また、技術面でも変化は起こっていて、最近ではドローンでグラフィティを描くアーティストまでいるんですよ。こうした新しいテクノロジーとグラフィティの融合を、僕はとてもポジティブに受け止めています。一方、グラフィティはストリートに名を残す行為でもあり、承認欲求や若者ならではの反抗的な主張があるという点については、変わってない。
そんな中、僕としてはやっぱり次世代の子供たちのために何かできればなと常に思っています。僕たちが築いてきた土台の上に、どんどん新しいものが積み重なり、それが今後も繰り返されればいいなって。
——マークさんと出会った〈フリー・アート・ニューヨーク〉もそうした活動の一環なわけですよね。
フューチュラ
そうですね。いずれにせよ、僕が活動を始めた当時、こんな未来が待っているとは夢にも思いませんでした。“Future is Unwritten”、未来はまだ書かれていないのです。20年後、どうなっているかはわかりませんが、僕には面白くなっているんだろうなという予感があります。その頃、僕は89歳ですが、100歳までは生きる予定なので楽しみで仕方ありません。
〈マーク ジェイコブス〉×フューチュラのコラボコレクション