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名古屋〈古小屋〉アパートの一室から溢れ出る、店主の目利きぶりに浸る山道具たち

今、時間も国境も超えて、店主の好きなものを集めた店が面白い。ライフスタイルショップにヴィンテージを置いたり、ヴィンテージ主体の店に、厳選した現行品やオリジナルを加えることで、店主の趣味がより強く発揮され、個性的な空間を生み出している。一期一会の出会いや、ものを介した会話が広がる個性派セレクトショップへ。

現在、山の魅力を伝える特設サイト「Mt. BRUTUS」もオープン中!

photo: Yoshiko Watanabe / text: Mako Yamato

商店街外れの古いアパートにひっそり看板を掲げる〈古小屋〉。一室を改装した空間に並ぶのは、稀少なオールドキャンプストーブや国内外のガレージブランドツールなど、山やキャンプにまつわる道具たちだ。

アメリカのボーイスカウトで使われていたカトラリーセットや、フランスの蚤の市で手に入れた折り畳みスツールを写して作ったプロダクトなど、山好きはもちろん、そうでなくても興味を掻き立てられるものが多数。店は決して広いとはいえないものの、それらがあちこちに潜んでいるのだから、時間を忘れて何周も回ってしまうことになる。

店主・古池祥二さんは長らく営んできた、洋服や器を扱う店を2019年に閉めた。その店で使っていた荷物を預ける倉庫を借りようと考えていたときに、このアパートに出会ったという。

「自宅の倉庫にたくさん持っていた山の道具を並べて、自分の楽しめる部屋を作ろうと。最初は店にするつもりはなかったけれど、コレクションを整理したいという気持ちもあって」。

非売品ながら山にまつわる本が並ぶのは、そんな経緯がある。古池さんは子供の頃から山登りやキャンプが好きで、60年以上のキャリアの持ち主。30代から山岳会に所属していたという。手元には長年かけてコレクションしてきたものや、買い付け先の海外で手に入れた道具が数多くあった。

「僕が惹かれるのは、人の手で作られたことが伝わってくるものや道具。気に入ったなら、じっくりものと向き合って、話もして手に入れてほしい。今はキャンプがブームで便利さを追求しているけれど、本来、山やキャンプは不便さをも楽しむものだし、手間をかけて使う道具の大切さや面白さも知ってもらえたら」

山小屋で使ってほしい古い道具、という店のスタイルを店名に込めた。スウェーデン〈オプティマス〉やフランス〈ピジョンイグナス〉など、60年代のものを中心に揃えるオールドキャンプストーブはすべて自らの手でメンテナンス済み。

デッドストックの〈カリマー〉のリュックに合わせフレームを作るなど、すぐ使えるように準備がなされた道具からは、古池さんのものへの愛情が伝わってくる。同様に現行品の〈ファイヤーボックス〉の調理道具や、アルコールストーブなど、愛用する機能性の高いツールも揃える。

そこに共通するのは、売るための商品集めはしたくないという思いと、ものそのものに魅力があるかどうかの厳しい選択眼。自分の部屋のような店には、心に響いたものしか置きたくないのだ。古くても新しくても、そのバランス感覚は絶妙で、目利きぶりに浸る心地よさを知る一軒。

愛知 古小屋 店内
古池さん同様、長年登山を続けていた人から譲り受けた道具も並ぶ。手前中央が家具工房〈HOFF & Co.〉と作った、ブロカント写しのナラ材のフォールディングスツール25,300円。「カトラリー1本でも、可愛いと思えるものじゃなくちゃ」と古池さん。

SELLING POINTS

● 実用だけでなく、店主の心に響く魅力ある山道具が揃う。
● 店主が長年かけコレクションしてきた貴重な古道具も。
● フランスのブロカントを写した新作のスツールも。