“ない話”が好きです。架空の人物、存在しない世界、伝説上の生き物……。ここにはないものに想いを馳せているときにしか得られないタイプの幸福感があります。
そんな私の趣味が漏れ出た企画が「空想動物園」。ドラゴン、ツチノコ、ペガサスといった想像上の生き物を動物園で飼うとしたら、どんな展示方法で、どんな世話をすればいいのか?というギモンを、真面目に検証します。
ご協力いただいたのは、神話や伝承の生き物の骨格と進化を研究している川崎悟司さんと、動物園獣医師としての長年経験を積んだ北澤功さん。
「ドラゴンって飛びますよね?」「伝説上では飛ぶし火も吹きますが、リアルに存在した際の生態を考えてみると、飛ばないですね。翼は肋骨が変形したもので、基本的に爬虫類なので」「なら、覆いやフェンス無しで飼えますね。種の保存のため繁殖させたいので、ぜひつがいで飼いましょう」「つがいで飼えば、求愛行動も見られますね。肉食なのですが、エサはどうしましょう」「馬肉と、あとはニワトリ。動物にとって食べることは最大の喜びなので、時間をかけて食べる状態を作ることがストレス軽減につながります」「あえてエサを隠して探させたり、骨付きにしたりするわけですね」……。
存在しない動物についての対談ではありますが、種の保全や生態の研究など動物園が持つ役割や、近年意識が高まっている「環境エンリッチメント」(動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現する試み)について知ることもできる、一粒で二度おいしい内容になっています。このページを読んだうえで動物園へ出かけると、また違った見方ができるかも。