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「Who’s Next?2022」編集後記:新しい才能たちの仕事術を学び、慣例的な働き方や凝り固まった思考をほぐす

2022年11月15日発売 No.974「Who’s Next?2022」を担当した編集者がしたためる編集後記。

photo: Kazufumi Shimoyashiki

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アート、建築、ファッション、ゲームにアニメ……。各業界を騒がす、いま最注目のクリエイターたちを取材し、彼らの発想の源や仕事術に迫った今号。取材でつまびらかになる、型やルールに縛られない新しい視点、働き方に、感心させられてばかりでした。

アメリカのビルボードR&B/HIPHOPチャートで1位を獲得したビートメーカーのTRILL DYNASTYさんは、作曲開始からわずか4年という短期間でこの快挙を達成。彼の緻密に練られたゴールへの筋書き、そしてそこに至るための泥臭くもある活動に、口をあんぐりしてしまいました。中でも印象深かったのが、「止まることはクリエイティブじゃない」と、仕事を終え夜19時から明け方4時まで曲作りをする生活を、約3年続けたというエピソード。「続けられないなら、本当にやりたいことじゃない」と自問自答するように、ひたすら曲を作り続ける胆力に驚かされました。HIPHOPの本場アメリカのプロデューサーに毎日DMで音源を送る行動力もさることながら、やりたいことへ真っ直ぐに走れるひたむきさが、偉業を成し遂げるためには欠かせないことなのだと。

手がける作品がことごとく話題になる気鋭のアニメーター、五十嵐裕貴さんの仕事術も興味深いものでした。五十嵐さんは分業が主流の昨今のアニメ業界において、原画や絵コンテ制作、演出にメカデザインまでを、一人で担ってしまう稀有な存在。その多才さはもちろん興味深かったのですが、個人的にハッとさせられたのは、「実際にアニメを楽しんでくれている人たちと同じ感覚を持ち続けることを意識している」という発言です。非現実を描くアニメーション作家として、決して失ってはいけない感覚なのだという。われわれが作る『BRUTUS』という媒体も、受け手がいて初めてコミュニケーションが成り立つということを再認識しました。

今号はここで挙げたお二人以外にも、若手からベテランまで数多くの才能を取り上げた一冊。新しい視点で時代を切り拓くクリエイターたちの仕事術を知ることで、自身の働き方や日々の意識が変わるきっかけになれば幸いです。

五十嵐さんの作業デスク
五十嵐さんの作業デスク。好きなものに囲まれている、ということも、仕事術の一つなのかもしれません。また、五十嵐さんの「忙しい時ほど野菜をきちんと取るようにしている」という体調管理方法も、「見習わねば……!」と。どんなクリエイションも、体が資本。

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