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「珍奇昆虫」特集 編集後記:その形や動きを面白いと思った経験が、誰でも一度はあるはず。

2021年12月1日発売 No.952「珍奇昆虫」を担当した編集者がしたためる編集後記。

Photo: Yoshiki Okamoto

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「好きなことやってる人間は長生きするんですよ」これは、江戸時代に日本最古の昆虫標本を作製したことで名高い、旗本・武蔵石寿の95年の生涯(当時としてはかなりの長寿)に触れた、東大博物館の矢後勝也先生の言葉。たしかに、と思いつつ、今回の取材で会っている虫好きの方々は、みなそういう方ばかりだなとも思いました。

驚くべきクオリティの標本を老後の趣味として作っていた武蔵石寿は、言ってみれば日本最古の昆虫マニアの一人。今回の特集にも、現代の武蔵石寿と言えそうな虫マニアのみなさんがたくさん登場します。

虫に人生を捧げ、好きな虫の話になると止まらない、そんな方々の情熱を一冊にまとめた特集になりました。虫、というだけで縁遠い雰囲気を感じてしまう方もいるかもしれません。

でも実は、虫は子供の頃にはじめて出会う身近な動物であり、その形や動きを不思議に感じたり、面白いと思ったりした経験が誰でも一度はあるはず。

自分も特集を作るにあたり、さまざまな本を読み、生きた昆虫の姿を見るにあたって、はじめて知って驚くことがほとんどでしたが、同時に子供の頃にカブトムシを飼っていたときの気持ちや、動いている虫を見てわくわくする気持ちを思い出すことにもなりました。

伊丹市昆虫館の館長・奥山清市さんの「昆虫館の役割はマニアを育てることではなく、昆虫を通して地球の環境や生物の多様性を考えるきっかけをつくること」という言葉も印象的です。

思えばマニアのみなさんも、並外れた知識や経験を持ちながら、昆虫の魅力をより広く知らしめるためにはどうすればいいか、考えている方がほとんどでした。そんな視点も、特集の随所に盛り込んでいます。

虫は地球上の生物で一番種類が多く、かつ未だ数百万種が発見されていません。想像を越える姿形の種が多く存在し、まだまだ謎も多い昆虫。その世界を知るきっかけにこの特集がなればうれしいです。

ちなみに私の推しムシはツダナナフシ。長くて奇妙な手足や突起をもつ虫に惹かれるようで、オトシブミにも好きな種が多数。皆さんもぜひ特集を読んで、自分の推しムシを見つけてみてください!

村田健人(本誌担当編集)

ブルータス_No.952_珍奇昆虫_fromeditors

伊丹市昆虫館で撮影したツダナナフシ。日本では南西諸島に生息しています。昆虫はエサなどで誘き寄せるのが難しく、撮影も難航。まっすぐのびた体と緑の光沢を撮るために粘りました。学芸員の方の協力もあり、ようやく撮れた一枚です

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