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「中華な気持ち。」編集後記:中華な気持ちは、食後にも

2025年5月15日発売 No.1031「中華な気持ち。」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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中華な気持ちは、食後にも

中華の特集を作ることになり、ならば中国茶についても少し触れたいと思っていました。それで、はじめは朝の中国茶ということでやってみるのはどうかと考えていたのでした。特集が「中華な気持ち」ならば、昼と夜だけでなく、コーヒーみたいに朝の中国茶習慣だってあっていいじゃないかと。そもそも中国茶というものが、カルチャーとしてとても面白そうだと思っていました。茶葉も、入れ方も、茶器もさまざま。やりましょうやりましょう。

ところが、中国茶は胃腸の働きを促すため、空きっ腹で飲むものではないということをすぐに知りました。街にある茶廊も、たいていは午後からの営業。お茶菓子などとともに嗜むものだということが分かったのでした。なるほど、午後の中国茶。

調査の末に辿り着いた茶樓は、なんと沖縄の中部にありました。雨の香りと書いて、〈茶楼雨香〉。店主の山内真さんが自ら、雲南などの自然豊かな地域まで赴き買い付けをしている、真剣勝負の茶樓です。中国のお茶の作り手と仲良くなるのは簡単ではないらしく、何度も通い、行く度に茶葉を買って、少ずつ親交を深めていく。そんなことを続けているうちに、商売敵や他所者には絶対に場所を教えない貴重な古樹を見に連れて行ってもらったことがあるそうです。

「この古樹を案内した日本人は、お前で2人目だ」と山内さんは言われたそうです。え、もう一人いるの?その一人目が今や彼の師匠だそうですが、その話はまた他の機会に。

とにかく、そんなこだわりの中国茶を、なんとティーバッグでも販売しているというのが、〈茶樓雨香〉のすごいところです。ここまでこだわりが強ければ、そりゃ茶器をひと揃えの上で楽しんでもらいたいというのが本心だと思います。それを、試しに飲んでみれば分かるはずと。本誌をお読みいただければ、きっとどなたも午後の中国茶を嗜みたいと思うはず。まずは雨香のティーバッグを試してみてください。はい、オンラインでも買うことができます。

ほかにも、100回以上中国に通う民藝のプロが誘う、マジの“ガチ中華”の話。また定番となった町中華の、その先のストーリーを辿った“続・町中華”など、食べ応え、読み応えのある記事を盛り込みました。中華な気持ちのお供にぜひ。

本誌特集で取材した沖縄・北中城の〈茶樓雨香〉で購入した茶器と中国茶で食後の一服。樹齢200〜500年の木の新芽のみで作ったという「雲南古樹」をいただく。ガラスのピッチャーは中国製。茶杯は、かつて文士たちが粋に酒杯で飲んだことにならい松田共司のおちょこで。蓋碗(がいわん)は中の茶葉が透けるほど薄い白磁。

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