次なるエリアを探して
ソウルは1年ごとに流行スポットが移り変わる、テンポの早い街だと聞きました。そして、みんながそのトレンドを知っている。だったら今回は、まだ多くの人に知られていない“次なるエリア”を探そうと、現地の目利きの案内を頼りに、7日間ソウル市内を歩き回りました。
そんななか一番心惹かれたのは、峨嵯山(アチャサン)という山の周辺エリア。ソウル特別市と九里市にまたがる標高295mの山で、現地の方はよく日帰り登山に訪れるそうなんですが、その麓の一帯がなんとも穏やかでノスタルジック。人通りもそこまで多くなく、時の流れが止まったような風情ある街並みに、ポツポツと魅力的な飲食店やカフェが点在する場所です。
急勾配の坂道の向こうに少し霞んで見える山肌、ヴィンテージオーディオの音に没入できる小さなレコードカフェ、快活なおじさんが営む手作り豆腐屋さん。現地の方曰く「このエリアは昔は住宅街だったけれど、今はトレンド至上主義に飽きた若者がのんびりした時間とお店を求めてここに集まってきているんですよ」と。
妙な共感を覚えるとともに、田舎育ちの自分にはその空気が心地よく感じられ、取材とは別で空き時間にひとりで再び散策。また必ず来たいと思える店にも巡り会えました。海の向こうに馴染みの街ができるのって、こんなに嬉しいものなんですね。今回の特集では中心地から地方まで、個性豊かな顔を持つ街を紹介しています。日本から近いからこそ、自分が何度でも帰りたいと思える場所を探す。そんな韓国旅のガイドとして、みなさんのお役に立てたらうれしいです。