タイラー・ザ・クリエイターが語った傘の例え話
〈オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー〉の育ての親である実業家のラムダン・トゥアミ氏がブルータス編集部を訪ねてきたのは昨年5月のこと。一緒に特集をやらないかというので驚いたのですが、企画も人選もアイデア連発で、メモをするのが大変なほど。恐れを知らない実業家の馬力、フロンティアスピリットを実感したミーティングでした。議題は明快で、「センスがいいこと=グッドテイストとは一体何なのか、ブルータスと一緒に探りたい」というものでした。
ブルータスは過去に、「真似のできない仕事術」など、ビジネスにちなんだ特集を何度も作ってきた歴史があるので、ならば今回はビジネスにおけるクリエイティブな側面をラムダン氏と旅して探ってみようということになったのです。
それからは、世界中を飛び回るラムダン氏の「来週あそこに行くけど、来れるか?」の誘いに、ついていけたり、ついていけなかったりしながら取材を行ってきました。
クリスマス前には、ニューアルバムをリリースしたばかりのタイラー・ザ・クリエイターへの独占インタビューも実現。彼は、センスがいいものというのは、ひとつのものではなくて、センスのいい選択が連なったアンブレラ=傘のようなものではないか、と答えてくれました。詳しくは本誌をお読みいただきたいのですが、みんな、いいこと言ってます。「目利きだからといって、グッドテイストなわけではない」というジェフ・マクフェトリッジの言葉も個人的には大好きでした。
そもそも、タイラー・ザ・クリエイターやアレッサンドロ・ミケーレなど、世界中にクリエイターの友人がいるラムダン・トゥアミという人物が一体何者なのか?今回の特集の一番の面白さは、彼の人生と仕事術をまとめた「ラムダン・トゥアミ、真似のできない人生と仕事術」にあるとも言えると思います。自分の仕事ぶりをいま一度見直したい人には、きっと何かのヒントが見つかる一冊になったと信じています。
また今号は、英語翻訳ブックレットも付いています。ブルータスはこれからどんどん海外の方にも読んでいただけるようになります。
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