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「通いたくなるミュージアム」編集後記:通い続けたい、ミュージアム

2025年1月10日発売 No.1023「通いたくなるミュージアム」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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通い続けたい、ミュージアム

コロナ禍を経て、新設や増設、リニューアルされる美術館や博物館、資料館が、国内外で続々オープンし、活況を呈しています。醍醐味は、なんといっても実際に標本や作品を体感できること。想像よりも巨大だったり、色が鮮やかだったり、テクスチャーが違っていたり……。実物をこの目で確かめたくて、足を運びます。

日本美術や近現代の美術作品だと、作品保全や著作権の関係で撮影禁止のところも多く、自ずと“じっくりとよく見る”ことに。いつでも何でもスマホで撮れる昨今忘れがちな行為に身を浸す、贅沢な時間です。ミュージアムって、通えば通うほど知ることができ、知れば知るほどさらに疑問が出てきて掘りたくなる、好奇心の沼のような場所です。

さて、今回の「通いたくなるミュージアム」、巻頭は、今年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』でも注目される「浮世絵」。ドラマに喜多川歌麿役で登場する染谷将太さんが、蔦屋重三郎がプロデュースした歌麿や写楽の作品を、東京国立博物館で鑑賞した様子を取材しました。

ミュージアムがある街で育ち、子供の頃から通っていたという染谷さん。「実在した表現者の役を演じるのは今作が初めて」だそうで、東京国立博物館の研究者・松嶋雅人さんから話を聞きつつ単眼鏡片手に歌麿の表現に浸っていました。

染谷さんが、自身が演じる歌麿の浮世絵にどのような印象を持ったのか、ぜひ本誌でご覧ください。また、今回の取材が染谷さんの演技にどのように生かされるのか、大河ドラマにもどうぞご注目ください。

そして巻末は、今年3月の休館と・都内への移転縮小が発表されたばかりの美術館を取り上げました。音楽家・アーティストの蓮沼執太さんに、鑑賞者として、またライブを行ったパフォーマーとして、この美術館についての文章を寄せていただきました。

東京・御殿山にあった美術館の閉館時にも感じたことですが、私立ミュージアムは特に、さまざまな理由で閉館してしまう場合がある。それも突然に。世にこんなにたくさんミュージアムがあっても、好きな施設がなくなり、展示品が見られなくなってしまうのは寂しいもの。また、ミュージアムが閉館した後の展示品や研究の蓄積が、どのような道を辿るのかも気になります。

ニューオープンのミュージアムに、期間限定の企画展にと巡るのに忙しいけれど、好きなミュージアムがいつまでもあってくれるように、通い続けて、サポートし続けたいな、と思う今日この頃です。

No.1023「通いたくなるミュージアム」ポップアップバナー

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