言葉で説明できない、映画でこその感動をつかまえたい
10月某日、映画好きが高じて映画会社で働いている友人から一枚の写真が送られてきました。今回の映画特集で実施したアンケートを、通っている劇場で見つけてくれたという知らせでした。ちゃんと映画好きに届いている。実感が湧いた出来事でした。
これは全国52箇所の映画館、そして映画好きならば誰もが使っているサービス、Filmarks(フィルマークス)で、計4万通のアンケートを配布、集計した企画です。
泣けたり、考えさせられたり、悲しくて滲みたり。広く解釈できるこの“沁みる”という言葉を、日本中の映画好きがどう定義するのか。ベスト10のランキングは驚きの結果でしたのでぜひ本誌でお確かめいただきたいと思います。それだけではとても拾いきれない個々の「私に沁みた一本」のコメントがあまりにアツく、とても沁みる内容だったので、特集全体にて50以上のコメントを掲載させていただきました。
今回、“沁みる”という感動にこだわったのにはわけがあります。この後を引く感情は、映画を一本じっくり味わってこそ発生するものです。視聴環境もさまざまとなった昨今ですが、早送りやブツ切り視聴ではきっと味わえない、映画体験の本来的な感動です。秋の夜長、ゆっくり映画を楽しみ、たくさん沁みていただければ幸いです。
蛇足ですが、私の沁みる一本は、かつて岩波ホールで観た、マノエル・ド・オリヴェイラ監督作「家族の灯り」(2012年)です。少し難解で、今でもなぜ心に沁みたのか、確かな理由が説明できそうにありません。しかし、確かに観た後もじわじわ考えさせられる、沁みる映画体験だったのでした。言葉で簡単に説明のできない感動が、映画にはあるのです。