レトロゲームで懐かしむ
壁、床、キッチン、浴槽にまで所狭しと積み重ねられたゲームソフト。その数なんと約4万本(⁉)。これらを蒐集(しゅうしゅう)するのは、自他共に認める熱狂的なゲームコレクターのフジタさん。
一つの作品につきプレー用、保存用、鑑賞用、予備×2(計5本)を最低限集めているという。ゲーム芸人としても活動する彼は、プレイステーション5やNintendo Switchなどの新型ハード機種が存在する今でもファミコンを偏愛する、いわばレトロゲームフリークだ。
「小学生の頃にファミコンと出会ったのが、僕の人生の出発点。当時はファミコンソフトが遠慮なく買えるくらいの家庭で育ったのですが、家庭の事情で親がほとんど家にいなくて一人で生活していたので、ずーっとファミコンで遊んでいました」と話すフジタさん。
時間無制限に遊んでいた小学生の彼は、そのおかげで友達よりもプレーの進行が速く、腕前の上達も速かったそう。
「当時は、今みたいに情報がある時代ではなかったので、どのタイトルもみんな必死に遊んでいろんな攻略法を考えていました。ゲームの裏技を24時間体制で電話受け付けしている雑誌があって、裏技を見つけたと電話して採用されると賞金とかもらえるんですよ。だから、小学生ながら徹夜で裏技を探してました(笑)。
当然クソゲーも多くて、散々理不尽な思いもしました。その甲斐もあってか世の中の理不尽さに対して免疫がついた気がします。大人になってからも、少年時代の原体験から大きな影響を受けることってありますよね。僕は、精神的にも多感な時期に食い入るようにゲームで遊んでいたので、ファミコン=少年時代の思い出なんです。そんな童心に返れるところが、レトロゲームに夢中な理由の一つかもしれません」
と室内のコレクションを見ながら分析するフジタさん。思い出を語りながら、レトロゲームとしてのファミコンの魅力についての話題に。
「ファミコンって、即死するキャラがいたりパスワードが必要だったり、今のゲームに比べて圧倒的に不自由で理不尽なんです。もちろん今のゲームの快適さもいいとは思うのですが、僕には、その不便さが心地よくて、ちょうどいいんです。シンプルかつアイコニックなドットのキャラデザにも惹かれます。本体にカセットを挿して電源を入れればすぐタイトル画面っていうのもいいですよね」
ファミコンソフトの容量は、現代では考えられないほど少ない。言わずと知れた名作『スーパーマリオブラザーズ』はわずか40KB。
これは、現在で譬(たと)えるとPCで作成した数枚の書類レベルで、その少ない容量に、画像や音楽を含めアイデアが詰め込まれており、それはまさに、作り手たちの研鑽の賜物だ。
「今も毎日ファミコンで遊んでいます。YouTube用の撮影もありますが、例えばスーパーマリオのタイムアタックとか、自分で遊び方に縛り(ルール)を設けたりすればまだまだ遊べるんです。もちろん、今時のプレステ5とかもやりますよ。でもね、キャラクターやストーリーに感情移入するまでに時間がかかるんですよ。おじさんですからね(笑)。だからついついファミコンに帰ってきちゃいますね。いつか僕のレトロゲームのコレクションを展示できる博物館ができたらいいなあ」