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各国のプレイヤーが腕を磨き鎬を削る。ゲームクリエイター・山内一典さんに聞く、e-sportsの世界

ライバルとの激戦を楽しむのもゲームの醍醐味。「e-sports」と呼ばれる勝負の世界について、オリンピックeスポーツシリーズの競技にも選出された『グランツーリスモ』を手がける、山内一典さんに話を聞いた。

photo: Hiromichi Uchida / text: BRUTUS

世界中の仲間やライバルと交流する

1997年に発売され、シリーズ累計9000万本以上(2022年11月16日時点)を販売している『グランツーリスモ(以下GT)』。数百以上のリアルな車がラインナップされ、世界各地を旅するカーライフを楽しむことができる。ゲームモードの一つとして用意されているレースに夢中になるプレイヤーが多く、e-sportsとしてさまざまな企業の協賛のもと大きな大会が開かれている。

さらに特筆すべきなのが、2008年から16年まで続けられた、世界各地の予選を勝ち抜いた猛者を集めた「GTアカデミー(正式名称は「GTアカデミー by 日産 × プレイステーション」)」で、実車のレーサーを育てるという異例のプログラムだ。

「ドライビングシミュレーターとしての完成度の高さを示したい、という気持ちもありましたが、一番は好奇心からでした。GTアカデミーを運営していた時期、実は私自身、リアルなモーターレースにも出場していたのですが、その経験からもGTのドライビングは、実車と全く同じ体験であると強く感じていました。

ステアリング、コースの精密さ、レースの緊張感、そして勝利した時の喜び。すべてにおいて、リアルレースと変わらない楽しさがあるのです。このシミュレーターを一番うまく乗りこなす選手は、リアルなレースでも活躍できると信じていました」

この結果からもGTの競技性の高さが窺える。2023年6月のオリンピックeスポーツシリーズのモータースポーツの正式競技にも選ばれた。

「私が非常に嬉しかったのは、オリンピックの競技に初めてモータースポーツが参入したことです。eスポーツシリーズの他タイトルはテニスや野球など実際のオリンピックにも存在する競技でしたが、モータースポーツはe-sportsが初めて。新しい歴史が始まる感覚がありましたね」

現在は『GTワールドシリーズ』という世界選手権を毎年開催し、世界中のプレイヤーが、夢を掴(つか)むために腕を磨き鎬(しのぎ)を削っている。

「大会を通して多くのトッププレイヤーに出会ってきましたが、彼らに共通して言えるのは“素晴らしい人間性の持ち主”であるということ。努力家であり博学であり、ひたむきさを併せ持っている。ドライビングの技術はもちろん必要ですが、素晴らしいメンタリティを持っていることが、トッププレイヤーたる所以(ゆえん)なのかもしれません。そんな人たちに出会えることが一番の喜びです」

GTとは一つのムーブメント。プレイヤー、メーカー、それを楽しむファン、世界中の人がシミュレーターを通じて出会い、交流を深めている。山内さんが作る新しいeモータースポーツの形から目が離せない。

グランツーリスモ7(2022)
対応機種:PS5、PS4
25年にわたり世界中に多くのファンを持つリアルドライビングシミュレーターの最新作。超リアルな挙動かつ豊富な車種を揃え、充実のカーライフや本気レースが楽しめる。