謙虚と野心。準備と即興。サービスに偽りなし
Netflixドラマ『極悪女王』で体を張ってプロレスラーの長与千種役を演じ、注目された唐田えりかさん。「みんなには言わなかったけど『極悪女王』では誰よりも練習しました。私の場合、自信を持って演じるには怠けないことが大事。厳しい現場でこそ成長できると思っています」。
揺るぎない瞳で、唐田さんはそう語った。彼女が出演した異色作『Page30』が今春公開される。筋書きは軟禁状態に置かれた4人の女優が、わずかな準備期間で演劇に挑むというもの。「芝居の中で真面目に遊べたのは、これが初めてでした」

「今でも職業欄には“サービス業”と書いちゃうんです。まだ俳優として胸が張れません」と語る唐田さん。しかし映画『Page30』では圧巻の長セリフとエモーショナルな演技を披露。それもサービス精神のなせる業か。
「劇中劇のセリフは難解で、しかもリハーサルごとにブラッシュアップされる。“こんなに準備したから大丈夫”と自信がつくまで台本を読み込みました。あと、現場では堤(幸彦)監督に楽しんでほしい気持ちが常にあって。予告にも使われた私が叫ぶシーンは、その気持ちから思わず出てきたアドリブです。役者としては、時にコントロールが利かなくなる人間性にも魅力を感じます。演じるうえでは、俯瞰と暴走を使い分けるのが大事だなって。とても難しいことですけどね」
本作の上映館として新たにオープンするテントシアター・渋谷 ドリカム シアターは、本作のプロデューサーである中村正人さんのバンド〈DREAMS COME TRUE〉にちなんでいる。そこで次に叶えたい夢を尋ねると「世界三大映画祭の制覇」と唐田さん。
「『寝ても覚めても』でカンヌに行けたのは濱口(竜介)監督のおかげで、自分の力ではないなと思っていました。だから次こそは堂々とカンヌに立ちたい。どうせなら三大映画祭を目指して頑張ろうって今は思ってます」
ちなみに『Page30』の撮影中、堤監督から「映画監督の仕事に興味ないか」と尋ねられたそう。対して彼女は「大きな声では言えないけど、自分の演出や言葉で役者が変わる瞬間を見ることにずっと興味があります」とのこと。唐田えりかさんの真価は底知れない。

与えられたのは30ページの台本と3日間の稽古期間のみ。追い詰められた4人の女優たちは演出家不在の中、互いのエゴをぶつけ合いながら上演日を迎える——。音楽は中村正人(DREAMS COME TRUE)と上原ひろみが手がける。4月11日、全国公開予定。