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真剣に歌えば今でもきっとカッコイイはず。『Every Picture Tells A Story』ロッド・スチュワート。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.26

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Every Picture Tells A Story』Rod Stewart(1971年)

真剣に歌えば、
今でもきっとカッコイイはず。

ロッド・スチュワートにはロック・ヴォーカリストというイメージが定着しているけれど、初期のロッドのソロ・アルバムはむしろ、フィドルやウッド・ベイス、マンドリンといったアクースティック楽器を主体にしたフォーキーなサウンドをバックに歌っていることの方が多いんです。

僕はジェフ・ベック・グループにいた頃のハード・ロックには興味がなかったけれど、この1作前に彼が出した『Gasoline Alley』を聴いたら、バンドでやっているような暑苦しいロックではなくて、風通しのいいとても爽やかな印象のレコードだったので、聴くようになりました。

でも僕が聴いたロッドのアルバムは、『An Old Raincoat Won't Ever Let You Down』『Gasoline Alley』『Every Picture Tells A Story』『Never A Dull Moment』『Atlantic Crossing』のソロ5作だけでしたが、それでもこの期間のロッドは、イギリスで一、二を争うカッコいいヴォーカリストだったと思います。

その後、なぜ再び離れたかというと、ロッドが真剣に歌っていないような、手抜きとはちょっと違うんだけど、遊び半分で余裕かまして歌ってるような印象を受けるようになったからなんです。それからはもう、一切聴かなくなりました。ロッドの場合、そういうふうに見せるタイプなのかもしれないけれど、聴いてる僕はそれが鼻について面白くないのでしょうがないです。『Atlantic Cr­ossing』の頃から彼は、アメリカに活動の拠点を移したんだけど、もしかするとそれがよくなかったのかもしれないな。

今回、『Gasoline A­lley』ではなくその次の『Every Picture T­ells A Story』を選んだのは、“夏”というテーマにはこのアルバムからシングルカットされて大ヒットした「Maggie May」の方が合っていると感じたからです。

もし今、僕がロッドに一言伝えられるなら、今からでも遅くないから一枚、あの若い頃の真剣さでレコードを作ってくれないかと伝えたい。ま、本人は、「俺はいつも真剣に歌ってる、想像だけで勝手なことを言わないでくれ」って言うと思うけどね。

Rod Stewart

side B-1:「Maggie May」

年上の女性との夏休みの恋を歌ったこの曲は、ブルータスの夏には欠かせないと思って。というのは冗談だけど、これを聴きながら酒を飲むと、思い出話をしてしまいそうな気はします。半世紀前の大ヒット曲なので、もし聴いたことがない人がいたらぜひ聴いてみてください。カッコイイ曲です。