「結成する前に影響を受けたバンドはスーパーカー。一緒にライブをして親しくなったHomecomingsやMONO NO AWAREとか、今の日本のバンドからの影響もある。彼らが頑張ってると私もやらなくちゃと思うから」と語るのは、DSPSのエイミー(ボーカル、ギター)。
「私が影響を受けた日本のバンドはbetcover!!。暴力的なくらいストレートな表現をしても何も怖がることはないと教わった」とイルカポリスのツモ(ボーカル、ギター)。
DSPSはメロディアスなシューゲイザー。イルカポリスはポップでエキセントリックで先が読めない面白さ。女性ボーカルのギターバンドであることと、ベーシストのアンディが両バンドを掛け持ちしている点を除けば、お互いの音楽性はかなり違う。なのに、みんなわちゃわちゃと仲がいい。その理由には、エイミーとツモの出会いも大きく関係しているらしい。
「弾き語りの企画があったとき、ゲストミュージシャンを誰にするか迷ってたんだけど、YouTubeで見かけた動画で、透明雑誌の『少女』を弾き語りするツモを見つけたんです。“この子、歌もギターもすごい!”と思って声をかけました」(エイミー)
「その頃の私はまだアーティストじゃないし、自分のオリジナル曲もなかった。でも、尊敬するエイミーから誘われた機会を逃して一生後悔したくなかったから、2ヵ月間で4曲新曲を書いたんです。つまり、DSPSのおかげで、私は曲作りを始めたし、イルカポリスを結成できた」(ツモ)
「最初から10年来の友達みたいにやりとりが弾んだよね」(エイミー)
エイミーとツモは、今年の1月に弾き語りのジャパンツアー『台湾から来た二人』も行っている。日台のライブ環境の違いを聞いてみた。
「日本のお客さんは、音楽性に敏感で常に新しいものを求めているし、新曲をやっても私たちがやりたいことを感じ取ろうとしてくれる。あと、海外では歌詞で伝えるのが難しいから、言葉より音楽で勝負しようということになるのかな」(エイミー)
彼らがかつて日本のバンドから影響を受けたように、今では、アジア各国のバンドが自分たちのやりたい音楽を真っすぐに表現する姿勢が、日本のバンドや音楽ファンに強く影響を与えていると思う。そう伝えると、彼らは「へえー」と声を揃えた。通訳さんがすかさず「台湾の“へえー”は「すごい」って意味なんです」と言葉を添えてくれた。
最後に今後の目標は?と聞くと、声を合わせて「フジロックに出たいでーす!」。

2つのバンドを聴き始めるなら、このアルバム
2018年リリースのファーストアルバム。エイミーの透明で穏やかなボーカルと、ふわふわとしたメロウさと激しさが交錯するギターが作り出すサウンドは、10年代後半の台湾イン『時間的産物』ディー新世代を象徴しているもの。曲ごとにメロディとアレンジには工夫が施され、言葉の壁を超えて物語性もしっかり感じられる。
2019年リリースのファーストアルバム。ツモが作り出す奔放なイメージを、アクロバティックなテクニック(アンディのベースが超絶!)&構成力で現実に。架空の冒険アニメの登場人物を描いたイラストの世界観をどの曲も裏切らない。このあとメンバーチェンジを経て、さらに拡張していった彼らの個性の出発点。