肩の力を抜いて演じることに辿り着いた
14歳で映画デビュー以来、ドラマ『浅草キッド』や『ガンニバル』の主演も記憶に新しい柳楽優弥さん。9月放送のWOWOWドラマ『オレは死んじまったゼ!』では、様々な役柄を演じてきた彼も初めてというホストの幽霊役を披露する。
「これまでどんな役柄も、組み立てて作り込むのが僕の中での正解でした。それがつい2年前から、以前よりパーソナルな自分のままで現場にいられる勇気を持てるようになった。30代でようやく、自分に正直で素直なもの作りができるようになったかなと思います」
死んでいる役柄を、生き生きと演じた舞台裏は?
役作りに対する考え方が大きく変わったのは、2021年公開のドラマ『浅草キッド』を撮り終えた頃だったという。
「もちろん、役柄を組み立てることに頼らないのは勇気がいる行為でした。でも、自分が定めたマニュアル通りに演じることが果たして正しいのかどうか、もう少し決めきらず柔軟に、直感に従って、即興的な表現の怖さを楽しむ方が、バランスがいいのかなと思えたんですよね」
持続不可能なレベルで自分を追い込むのをやめたら、キツさが消えて、伸び伸びとした素直さが出てきた。場末のホストクラブで働き、ある日突然死んでしまう主人公の“ゴミみたい”な人生を幽霊になって見つめ直すヒューマンドラマ『オレは死んじまったゼ!』でも、いい意味で力の抜けた、死んでいるのに生き生きとした痛快なキャラクターの魅力を表現している。
「役柄を演じるにあたって長久允監督には、アメリカ的な演技のアプローチではなく、フランスのようなことがしたいという話をしました。監督がそのニュアンスをきちんとキャッチしてくれたのも嬉しかったですね。僕自身の今のコンセプトに対してもすごく良い現場だったと感じるし、何より楽しかったです」
劇中では、輪廻転生や成仏といった不思議な世界観の中で、個性豊かなキャラクターたちを通して、現代社会が抱えている様々な問題が、ユーモラスな人間ドラマとして描かれる。
「LGBTQなど今理解を深めるべきテーマをエンターテインメントとして扱う監督のセンスも好きだし、新しいですよね。映画界をリスペクトしながらも、既存の映像や音楽のルールにとらわれず、時代の良さを自由に取り入れている。本編を見て、こんなに面白くなっているんだ!と驚きました。幽霊は怖いのであまり信じていませんが、もしドラマのように幽霊になったら何がしたいか、ですか?ディカプリオの家に行ってみるとか……いや、いつも何してるんだろうなって(笑)」