自身の体験をもとに描くカナイフユキのアート作品
英国発祥のシューズブランド〈ドクターマーチン〉が、継続的にLGBTQIA +コミュニティのサポートを行っていることをご存じだろうか。1980年代から自由のために行動した多くの活動家や運動家に愛されてきたブーツは、現代においてクィア文化やアイデンティティを代弁するアイテムとして脚光を浴びているのだ。そして、LGBTQIA +の人々が自分らしくいることに誇りを持つべきとする「PRIDE」という概念のもと、世界各地で行われるパレードへ積極的に参加しているのもサポート活動のひとつ。「PRIDE」をテーマにしたスペシャルなコレクションを定期的に発売しているのだが、今回は世界中から選出された3人のLGBTQIA+のアーティストとのコラボレーションモデルを発表。4月から6月まで毎月1型ずつ合計3型リリースしていく予定だ。
そして全世界で展開されるコラボレーションの第1弾として、日本人アーティストのカナイフユキが起用された。彼は個人的な体験と政治的な問題を交差させ、あらゆるクィアネスを掬い上げて提示することをモットーに活動しているイラストレーターで、柔らかな線で描かれるコミック調のタッチを得意とし、人間の繊細な感情を表現している。そんな彼に、どういった経緯で〈ドクターマーチン〉とのコラボレーションに至ったのか、また今回の共作に込めた想いについて、特別に話を聞いた。
Q.〈ドクターマーチン〉についてどんな印象をお持ちでしたか?
A.
重みがあって力強いブーツ。そして、パンクなどのミュージシャンに愛用されてきたブランドというイメージが以前からありました。ですが、今回の取り組みをする際にブランドについてお話を伺って、現在でもさまざまなストリートカルチャーや社会運動と密接な関わりがあると知りました。
Q.今回製作した「1460 FOR PRIDE 8ホールブーツ」のテーマは?
A.
“いろいろな人がいて、一緒に生きている”というメッセージをイラストに込めました。実際に多くの人に着用してもらえるよう、色々なコーディネートに合わせやすいデザインにしています。〈ドクターマーチン〉のデザインチームが僕の描いているマンガを気に入ってくれたので、絵のタッチはマンガ調に。僕自身は西洋のコミックに影響を受けているのですが、そんな僕のイラストでも日本らしく見えるというのは、面白い発見でしたね。
Q.本作は全世界で発売されますが、率直な感想を教えてください。
A.
とても大規模な依頼だったので正直驚きましたし、PRIDEキャンペーンということでいろいろと不安もありました。僕ひとりでLGBTQIA +すべての声を代弁することはもちろん不可能なので、自分では力不足なのではないか?とか。ですが〈ドクターマーチン〉の担当の方から自分が選ばれた理由を聞いて、お引き受けすることに決めました。
製作は、楽しかったことも悩んだこともたくさんありました。ですがギリギリまで試行錯誤を重ねてより良いものを作ろうとするチームの姿勢に刺激を受けたんです。今後の活動にぜひ生かしていきたいですね。
Q.〈ドクターマーチン〉のPRIDEとの取り組みについてどのように感じていますか?
A.
とても素晴らしい活動だと思うので、ぜひ今後も続けてほしいと思います。これからもパンクやスケーターなどのDIY精神を大切にするカルチャーや、大きな権力に潰されないように声を上げるアクティビストたちの味方でいてほしいです。プライドキャンペーンもどんどんと規模を広げて、世界中の国でそれぞれひとりのアーティストを取り上げるぐらいに発展してほしい!たくさんの注目を集められる、今必要な取り組みだと思います。
カナイフユキの過去作品を紹介!
〈ドクターマーチン〉によるPRIDE活動
〈ドクターマーチン〉はPRIDEとの取り組みに積極的だ。例えば、LGBTQIA +理解を深める活動を行うNPO法人“ReBit”へのサポート。グローバル規模での支援も決定し、寄付や社会啓蒙などを継続的に行っている。そして、4月22〜23日に開催予定の東京レインボープライドのパレードとブースで参加予定だ。
2023年春夏コレクションでは、今回のコラボレーション以外にもPRIDEをテーマにしたブーツを展開。「1460 FOR PRIDE」は、履いていくにつれ生まれるシワや傷によって、トップコートが剥がれ、下地の虹色が現れるデザイン。履く人と同じように、個性的になっていく一足。 30,800円。
キッズ向けのデザインも展開。ブラックのハイドロレザーに虹やハートのグラフィックが映えるデザインは、次世代の子供たちに向けた、包容力と受容力のメッセージが込められている。 13,200円