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あれ、観た?ヤバイよね?今、面白いドキュメンタリー9選 Vol.1

面白いドキュメンタリーは、人に教えたくなる。そして、みんなでワイワイ話したくなる。今盛り上がっているポップな話題作を集めました。自然の神秘、宇宙のロマン、事件の深〜い闇、あの人の秘められた感情……全方位からエキサイティング!

Text: Chihiro Kurimoto, Akio Mitomi, Shigeo Kanno

『宇宙へのカウントダウン :ミッション・インスピレーション4』

これまで宇宙へ行けるのは、選ばれしスペシャリストだけだった。ところが、本作に登場する4人の乗組員は、私たちと同じ民間人!

このプロジェクト「インスピレーション4」の発案者であり1人目の乗組員は、実業家のジャレッド・アイザックマン。彼は「宇宙へ行くなら地球にも貢献したい」と、小児研究病院へ寄付する2億ドルを募ると発表。集めるメンバーには4つの柱を掲げた。

ドキュメンタリー番組『宇宙へのカウントダウン :ミッション・インスピレーション4』
素人でも宇宙に行ける時代、来てる。

自身を「統率力」とし、ほかに「希望」として小児がんからのサバイバーであるヘイリー、「寛大さ」は寄付を行ったクリス、「繁栄」に起業家のサイアンを選んだ。命の保証がないにもかかわらず、全員ほぼ即答でチャレンジを選択。特にヘイリーは幼少期に骨肉腫の治療を受け脚に金属が入っているのに、自分の体重の約5倍の重圧に耐えたり、雪山を9時間半かけて登ったりと、NASAの宇宙飛行士と同等の訓練を乗り越えていく。

この作品は、打ち上げから帰還の間だけではなく、メンバー選出や訓練の段階からリアルタイムで密着している。スタート段階では、成功するのか、メンバーが命を落とさずに帰ってこられるか、全くわからないのに、だ。
映像を観るうち、「いつか自分も」と思った人もいるだろう。民間宇宙旅行は、すでに「遠い未来の夢」ではなくなっている。

『カルロス・ゴーン 最後のフライト』

「ゴーン被告海外逃亡」。2020年元日の新聞各紙が1面で報じたのは、日産自動車の役員報酬に係る不正容疑で2度にわたる逮捕と保釈を経た、カルロス・ゴーン被告の日本脱出劇だった。

この衝撃的なニュースは世界を駆け巡り、楽器ケースに入ったまま関空からプライベートジェットで飛び立ったというストーリーには、誰もが好奇心を刺激された。

ドキュメンタリー番組『カルロス・ゴーン 最後のフライト』
逃亡劇、ほぼ映画じゃん!真相は藪の中か……。

本作の軸となるゴーン被告とキャロル夫人のインタビューは、8日間かけてレバノンのベイルートで撮影された。見どころはやはり、本人の証言に基づく日本脱出の再現映像。事件当初、アクション映画のような展開が世間をあっと言わせたが、ドキュメンタリーの中でも、そこはドラマティックだ。

だが、ゴーン夫妻以外の関係者が語る被告像はさまざまだ。「フランス政府と日産の間に生じた軋轢の犠牲者だ」「本人にも思い上がりがあった」「日本の司法制度に問題がある」……。だが、無罪だというゴーン被告の主張を100%肯定するのは、妻のキャロルと元部下のグレッグ・ケリー被告だけ。

ドキュメンタリーはフィクションより奇なり!考えさせられるのは、当事者以外は知らない事実があるということ。誰が語るかによって、「真実」は揺らぐ。

『ザ・ビートルズ : Get Back』

ビートルズの実質的な解散後にリリースされたアルバム『レット・イット・ビー』の制作過程を撮影したドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』(1970年)は、ジョンとポールの確執、ジョージの一時離脱やヨーコの存在など、当時噂に上った解散理由を映画の中に探そうとしたファンも多かった。

映像も暗く“解散に向かう物語”のムード……だったのだが!

ドキュメンタリー番組『ザ・ビートルズ: Get Back』
50年前のスタジオにタイムスリップしたみたい。

再編集版となる本作の監督ピーター・ジャクソンはオリジナル監督のマイケル・リンゼイ=ホッグが残した57時間分以上の未発表映像をレストアして再構成、1969年1月2日から31日まで、時系列に沿ってリアルタイムで密着しているかのように、ライブバンドとして再出発=ゲット・バックしようとする生き生きしたビートルズ像を浮かび上がらせた。

有名曲が出来上がる過程や、最後のライブとなった42分間のルーフトップ・セッション完全版など見どころは尽きないが、レコーディング中ふざけ合う4人の表情が、オリジナルの老成した雰囲気とは真逆。なにしろ当時ジョンとリンゴが28歳、ポール26歳、ジョージ25歳!年下かよ、と驚く人も多いのでは。同じ映像でも時代背景や編集で印象ががらっと変わるという好例だ。