従来、福祉は家族が支えていたが、少子高齢化により家族だけで福祉を完結させる昭和モデルは限界が来ている。また社会的孤立に対して“専門家”が薬で対応しようとするのも限界があり、当事者の声を聞く必要があるという認識に変わりつつある。
社会的処方
社会的孤立を感じている人に対して、薬よりも人とのつながりを処方する方が本人にとって満足度が高いことがわかってきた。介護の現場では言われてきたことだが、医療者も着目するようになってきたことが重要。
生きがいや役割、価値を一人で見出せない状況にある高齢者や、生きづらさを抱えている人には、リンクワーカーやソーシャルワーカーが、本人の特性を聞き、本人ができそうなこととマッチングして社会とつなげることが必要とされる。
オープンダイアローグ
精神症状の急性期に医療チームが患者を訪問し、本人が話したいことを話してもらい、ひたすら聞き続けることにより、症状が収まったり消失したりするという精神医療の手法。
専門家が判断するのではなく、本人の声に基づき、本人が何を求めているのかを大事にしようというフィンランド発祥の考え方によるもので、数年前から日本でも注目されている。
オープンダイアローグにおいて大事なのは、他者には自分にはわかり得ない“他者性”があるということを理解し大事にするということ。相手の声に耳を傾けることができる力が重要。
子どもアドボカシー
子供が意見を表明できるようにサポートすること。声なき声を大事にし、きちんと聞くというのがアドボカシーという概念の中心にある。
2023年の4月に施行された「こども基本法」の中でも子どもアドボカシーが重要視されている。大人であっても障害者や高齢者など、権利を行使しにくい人の声を聞いて、しっかり受け止めるアドボケートという存在がとても重要。
ポリフォニー
異なる音を調和させるのがハーモニーだが、違う音を違う音のまま響かせ合うのがポリフォニー。日本社会では同調圧力が強く、ハーモニーが求められることが多いが、さまざまな価値観がある現代の混沌とした状況の中で、一人一人の異なる声を大事にすることが重要。
それはまた、自分の唯一無二性に気づき、自分自身の声を大事にするということでもある。そして他者の合理性の理解、つまり自分には非合理に思えてもその人なりの合理性があることを、共感しなくてもいいから理解するということが大事なのだ。