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伊勢武史が解説。明日がわかる「自然・環境」の最新時事用語事典

ステップアップを成し遂げるためには、スキルを身につけることと同じように、新しい知識を手に入れることも大切。そこで、京都大学フィールド科学 教育研究センター准教授・伊勢武史さんに、ちょっと先の未来を見据えた「自然・環境」における最新キーワードを解説してもらいました。新たな学びは、新たな言葉を知ることから。リスキリングの武器となる、最新時事用語集です。

illustration: Kei Hagiwara / text: Madoka Hattori / edit: Ichico Enomoto

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人間だけが後先を考えることのできる生き物である。近年の異常気象や感染症問題などで実感している人も多いだろうが、気候危機を含めた環境問題は待ったなしの状態。しかし悲観的になる必要はなく、考え方次第で、環境を守りながら生活を豊かにすることは可能だ。

One Health

人類・動物・環境の健全性は相互に深く関わっているため、総合的なアプローチが必要であるという考え方。新型コロナウイルスなどの近年の感染症は野生動物に由来している。環境破壊など人間活動の影響で、以前は地域に存在しなかった病原体が持ち込まれ、野生動物が感染することも。これらの問題には、医学・獣医学・環境科学の専門家が分野横断的に取り組む必要がある。

ジオエンジニアリング(地球工学)

気候変動に対処するため、地球を大規模に操作すること。主に、大気中の二酸化炭素除去技術と太陽光反射技術からなる。前者は、工場排気中の二酸化炭素をキャッチして地中に埋めるなどの技術開発が進んでいる。後者は例えば、大規模な火山噴火があると、成層圏にエアロゾルと呼ばれる微粒子が放出され、太陽光が宇宙に反射されて地球規模で気温が低下するという現象を応用し、成層圏にエアロゾルを放出するという構想がある。

これらは地球の気温を下げるうえで画期的な効果が期待される一方、予期せぬ災害をもたらすことも懸念されるため、今後の真剣な議論が待たれる。

ジオエンジニアリング(地球工学)のイラスト
火山のように人工的に粒子を散布して太陽光をはね返すという理論。

ESG投資

Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)への適切な配慮がなされている企業に投資する動き。企業は、中長期的な成長のため持続可能性を高める行動を取るべきだ。そもそも地球環境が悪化すると経済活動が滞り、株価は下がる可能性がある。環境あっての社会であり経済である。何十年、何百年という長い目で投資することが、結果として投資家にプラスになるだろう。

太平洋ごみベルト

カリフォルニアとハワイの間に存在する、大量のプラスチックごみが浮かぶ海域。日本など東アジアの国々から排出されたごみは、海流に運ばれてここに行き着き、半永久的に漂う。このまま人類がプラスチックを放出し続けると、2050年には、海に生息するすべての魚の重量を超えるといわれる。その対策には、海からごみを回収する技術の開発とともに、ごみを適正に処理するための教育啓発、ごみを出しにくい漁業法の普及などが必要である。

太平洋ごみベルトの図

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