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本田由紀が解説。明日がわかる「教育」の最新時事用語事典

ステップアップを成し遂げるためには、スキルを身につけることと同じように、新しい知識を手に入れることも大切。そこで、東京大学大学院教育学研究科教授・本田由紀さんに、ちょっと先の未来を見据えた「教育」における最新キーワードを解説してもらいました。新たな学びは、新たな言葉を知ることから。リスキリングの武器となる、最新時事用語集です。

illustration: Kei Hagiwara / text: Ikuko Hyodo, Miki Hayashi, Madoka Hattori / edit: Ichico Enomoto

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社会学のアプローチで教育を調査・研究する教育社会学。その観点から社会を見ると現代の問題点が浮かび上がる。

NQF

National Qualifications Frameworkの略。ある国の大学で取得された学位や資格が、ほかの国では何に当たるかという互換性を一覧にしたフレームワーク。欧州ではEuropean Qualifications Frameworkがあり、EU加盟国間での人材の移動をスムーズに行えるようになっている。

学位や資格の互換性は、日本から海外へ移動する際はもちろん、人材を海外から受け入れる際にも大事になってくるが、日本にはこの仕組みがまだない。このこと自体が、いかに日本が世界的な動向から取り残されているかを象徴している。

スキル形成レジーム論

資本主義下の先進諸国を対象に、働く人が労働に必要な職業スキルをどう身につけたかを「公的な関与」と「企業の関与」の高低を組み合わせた4つのケースに分類し、そのスキルがどう評価されるかを捉えようとする議論。

経済面で限界に来ている日本が、今後整えるべき新たな体制を他国を参照しながら考えていくことも可能にする、社会を改善していくうえで知っておきたい思考の一つだ。

スキル形成レジーム論における先進諸国の4分類の図

国際成人力調査

OECD(経済協力開発機構)が中心となって実施する国際比較調査の一つで、16~65歳の参加者の「読解力」「数的思考力」「状況の変化に応じた問題解決能力」の3つのスキルに関して、どの程度の水準にあるかを把握する調査をし、その力と社会的・経済的成果との関係などを分析するもの。

2022年から2023年3月にかけて最新の調査が日本のほか欧州など30ヵ国において行われ、調査結果は2024年公表される予定となっている。2011年から12年にかけて行われた第1回の調査結果では「読解力」と「数的思考力」では日本は世界1位だったが、今回の結果がどうなるか、各分野から注目が集まっている。

国際成人力調査イラスト
スキル調査のほか、口頭で回答する面接方式で背景調査も行われる。

オーバー・クオリフィケーション

従事している職業に必要とされる学歴よりも、高い学歴を取得していることを指す言葉で、国際成人力調査の結果から得られる知見の一つでもある。

第1回の調査結果において日本のオーバー・クオリフィケーションは世界1位で、いかに人々の高いスキルが活用されていないかが明らかになった。これは企業側の責任が大きいともいえ、今後改善が必要とされる。

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