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小崎哲哉が解説。明日がわかる「アート」の最新時事用語事典

ステップアップを成し遂げるためには、スキルを身につけることと同じように、新しい知識を手に入れることも大切。そこで、アートプロデューサー、ジャーナリスト・小崎哲哉さんに、ちょっと先の未来を見据えた「アート」における最新キーワードを解説してもらいました。新たな学びは、新たな言葉を知ることから。リスキリングの武器となる、最新時事用語集です。

illustration: Kei Hagiwara / text: Ikuko Hyodo, Miki Hayashi, Madoka Hattori / edit: Ichico Enomoto

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ミニマリズム、ポップアート、ニューペインティングなど、かつてはさまざまなムーブメントが花開いたアート界だが、「関係性のアート」を最後に、もはや出尽くした感がある。

21世紀に入ってからは新しいテクノロジーを使った表現が見られるとはいえ、コンセプトが貧弱なものが少なくない。「アートとは何か」という根源的な問いを下敷きにした、骨太で知的な作家や作品の出現が期待される。

NFTアート

Non-Fungible Token(代替不可能なトークン)技術を使ったアート。その特性上、無限に複製可能なデジタルアートの唯一性を、ブロックチェーン技術を応用したNFTで担保する。マーケットの要請によって開発された「本物であることのお墨付き」だが作品の価値とはもちろん無関係。

アーティストコレクティブ

ヴェネチア・ビエンナーレ2022で日本館代表となったダムタイプや、過激な作風で知られるChim↑Pom from Smappa!Groupなど、メンバーが個人的活動も行うアーティスト集団のこと。「ゆるやかな連帯」は音楽など他ジャンルでも流行していて、今後も増加することが予想される。

『ドクメンタ15』で芸術監督を務めたインドネシアのルアンルパは、アーティスト、キュレーター、編集者、アクティビストなど個人がさまざまな顔を持つコレクティブだ。

Chim↑Pom from Smappa!Group
アーティストコレクティブとして活動するChim↑Pom from Smappa!Group。撮影:山口聖巴

SEA

Socially Engaged Art。社会的問題や課題に取り組むのにアートの手法を使う社会関与型芸術。素晴らしい事例もあるが、そもそも玉石混交で石の方が多い現代アートの世界では、SEAもその例に漏れない。

2022年開催された『ドクメンタ15』はほぼすべてがSEAで、評価が分かれた。PC(political correctness)、つまり政治的正しさを求める傾向と重なる。

シュルレアリスムの復権

2021年にNYのメトロポリタン美術館で開催され、2022年ロンドンのテート・モダンに巡回した『国境を越えたシュルレアリスム』展や、“忘れられていた”女性シュルレアリスト作家を多数紹介した2022年のヴェネチア・ビエンナーレ本展など、シュルレアリスムが脚光を浴びている。

後者の展覧会名は、シュルレアリストの画家レオノーラ・キャリントンが描いた絵本『The Milk of Dreams』から採られていた。アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』から100年となる2024年にはパリのポンピドゥー・センターでもシュルレアリスム展が開催される予定。

レオノーラ・キャリントンの絵本『The Milk of Dreams』
レオノーラ・キャリントンの絵本『The Milk of Dreams』。

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