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沁みる映画案内101 Vol.8『ショート・ターム』『コロンブス 永遠の海』etc.

人生の一本が人それぞれであるように、映画で沁みるポイントもまたしかり。あなたはどんな“沁みる”がツボですか?ジャンル不問の101本を沁みるポイントに特に注目してご紹介します。そのためネタバレ注意、ご容赦ください。観た後どう沁みるか、ハッシュタグ付きのキーワードもご参考に。

text&edit: Keisuke Kagiwada / text: Nozomi Hasegawa,Ryoko Iino / special thanks: Satoshi Furuya

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老いてなお挑戦する姿が沁みる

あのトム・クルーズも、もう62歳。高齢者が何かに挑戦するのは、今や不思議でも何でもない。しかし、彼らの行動や挑戦には、確固たる意志と重みを感じることが多い。人生の後半をどう生きるか。私たち現代人の重要課題でもある。

『ストレイト・ストーリー』

年を重ねているからこそ挑める無謀な旅

73歳のアルヴィンは、仲違いをしていた兄が倒れたと知り、芝刈り機で会いに行くことに。旅路の過程で、さまざまな人たちと出会うアルヴィン。ある若者に「年を取ってよかったことは?」と問われた彼の答えが印象的だ。「細かいことを気にしなくなった」。だからこそ、こんな無謀な旅に挑むことができたのだろう。

#味わい深い #癒やされる

映画『ストレイト・ストーリー』
Everett Collection/Aflo

『最高の人生の見つけ方』

人生最後の数ヵ月を、最高の日々にするために

大富豪のエドワードと自動車整備工のカーター。本来出会うはずのない2人はガンを患い、同じ病室に。ともに余命6ヵ月と宣告されてしまう。ある日、カーターの“棺桶リスト”をエドワードが発見。そこには「スカイダイビングをする」「泣くほど笑う」「世界一の美女とキスをする」など、死ぬまでにやりたいことが記されていた。

#味わい深い #キュンとする

『イーディ、83歳 はじめての山登り』

手遅れなんかじゃない、確かに今、ここにいるのだから

「何も遅すぎることはないさ」。これまでの人生を夫の介護に捧げてきた83歳のイーディは、馴染みのフィッシュアンドチップス店で追加注文した際にかけられた言葉に後押しされ、長年の夢だったスコットランドの山に登ることを決意。山中で、青葉と自分の手を重ねるイーディ。その手に刻まれたシワは葉脈よりも多く、深いが、それを見つめる瞳はさながら少女のきらめきだった。

#アツくなる #味わい深い

『コロンブス 永遠の海』

齢99歳の監督が妻と演じる、空前絶後のロードムービー

コロンブスがポルトガル人だったという説を確かめようとする歴史学者とその妻による冒険ドラマだ。製作時、監督のオリヴェイラは99歳。しかも、主演を監督自身が、ヒロインを彼の実際の妻(一般人)が務めているのだから、これ以上に挑戦的な映画もない。とりわけ、慣れない長ゼリフを言い終えた妻を、役も忘れ思わず褒め称えるオリヴェイラの声が微笑ましい。

#不思議な気持ち #キュンとする

大人の世界に翻弄される子供が沁みる

思わず心配しながら見守ってしまうのが、高齢者ともう一つ、子供たちだ。容赦ない大人の世界に直面しながらタフに生きなくてはならない子供たちは、それに抗(あらが)う手段を持たず、反発する力も持たない場合が多い。

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』

混沌とした時代の中で、もがき苦しむ少年たち

舞台は1960年代初頭の台北。40年代後半に安定を願い中国大陸から渡ってきた、いわゆる「外省人」の子供は大人たちの不安を感じ取り、徒党を組み始めていた。政治や権力で争う大人に対して、暴力で争い合う少年たち。そんな環境に翻弄された小四(シャオスー)は、自身のアイデンティティを見失い、恐ろしい事件を引き起こしてしまう。

#考えさせられる #胸が痛い

『無防備都市』

少年たちの記憶に一生消せない傷跡を残す戦争の残酷さ

第二次世界大戦末期のイタリア。ナチスドイツに対抗するレジスタンス運動には多くの子供も参加している。しかし、抵抗も虚しく、メンバーは次々に拘束され、処刑されていく。その残虐な風景を金網越しに見つめる少年たちの表情が忘れがたい。戦争は彼らから子供時代を奪うだけでなく、一生消せない傷跡も残すのだ。

#考えさせられる #胸が痛い

映画『無防備都市』
Everett Collection / Aflo

『ラジオ・フライヤー』

弟を乗せたワゴンを、幸せな世界へ飛ばしてあげたい

弟のボビーが母親の再婚相手である義父から虐待を受けていることに心を痛めるマイク。ところが、「ママに心配をかけたくない」と兄を口止めするボビー。虐待がついに度を越した日、2人はある計画を実行する。飛行船のように改造した小さなワゴンにボビーを乗せ、義父のいない遠い幸せな場所へ飛ばしてあげるのだ。「真実は物語の中」。大人になったマイクはそう言った。

#考えさせられる #胸が痛い

『ショート・ターム』

ラップでいつも押し殺している気持ちを表現する

〈ショート・ターム12〉は、心に傷を抱える青少年向けの短期保護施設だ。18歳になると施設を出ねばならず、マーカスは暴力を振るう母とこれからまた暮らさなければならないことに不安を覚えている。トラウマを抱えた彼が母への憎しみをラップに乗せて歌うシーンが素晴らしい。彼にとってラップは、普段押し殺している本音を唯一語ることができる方法なのだ。

#アツくなる #考えさせられる

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