Gallery COMMONの展示に合わせ写真集を復刊
1993年、森山大道は〈ヒステリックグラマー〉の企画立案に応じる形で写真集『Daido hysteric』を作る。互いにとって初の試みだった取り組みは、シリーズ4冊の写真集を出版し結実する。
2人が確立したファッションとカルチャーのクロスオーバースタイルは、以後、国際的に広まり定着していった。今となってはなかなか手に入らない伝説の写真集の中から、今回は4冊目の『Daido hysteric no.4』を中心にGallery COMMONが企画・展示。写真集そのものも限定復刻することが決まった。
始まりは伝説の同人誌『Provoke』から
1964年に写真家として独立した森山は、1968年に美術評論家・多木浩二や写真家・中平卓馬らが発刊した前衛的な同人誌『Provoke(プロヴォーク)』に参加。全3冊のうちの2号と3号に参加する。
写真界に衝撃を与えた雑誌は、84年に〈ヒステリックグラマー〉を立ち上げた北村信彦にも大きなインパクトを残していた。80年代の後半に偶然に『Provoke』を目にした北村は、写真集の出版を思いつく。
DCブランドがデザイナー主導で栄華を極めていた時代に、音楽やサブカルのグラフィックを前面に押し出す北村のスタイルは、当時の“ファッション”の枠には収まりきらなかったが、それだけにカルチャーとファッションの結びつきに人一倍の情熱を燃やしていた。
お金儲けに直結しない、クリエイターをサポートするパトロン的な試みは、当時としてはまったく新しく、奇異なものとして映ったに違いない。
今回の展示は、『Daido hysteric no.4』が中心
そうして1993 年に始まった『Daido hysteric』シリーズは、モノを中心に縦写真で構成された1冊目(no.4)、東京の群衆を切り撮った2冊目(no.6)、大阪の街を収めた3冊目(no.8)と順に刊行され、いずれも圧倒的なボリューム感を誇った。
2016年3月1日号のBRUTUS「森山大道と作る写真特集」においても「何を撮ってもいい、しかも400ページもある写真集を作れるというのは、当時の自分にとって大きかった」と森山自身が語っている。写真家としても新たなファンを獲得していくきっかけになったのだ。
今回は『Daido hysteric no.4』を中心とした写真に加え、未公開写真1点を含む48点のゼラチン・シルバープリントと9点のシルクスクリーンキャンバス作品をギャラリーで展示。『Daido hysteric no.6』からの6点と、93年当時のヴィンテージプリントも8点展示されているので、ぜひ足を運びたい。
もうひとつの目玉は、当時限定300部で発売され入手困難となった、貴重な写真集を限定900部で復刊し販売すること。400ページに及ぶ当時の印刷下版データは残っておらず、すべて当時の写真集をスキャンして微調整をかけ、表紙のフォントなども忠実に再現して、完全復刻の形でレイアウトし直したという。限定復刻のうち、50冊はオリジナルのゼラチン・シルバープリント付きのスペシャルコレクターズエディションになるという。
Daido hysteric no.4 リマスタードエディション(850部/作家サイン&ナンバー入り) 16,500円
Daido hysteric no.4 スペシャルコレクターズエディション(50部/作家サイン&ナンバー入り) 110,000円
*25.4×30.5cmゼラチン・シルバープリント1枚付き(イメージは5種類。各10部限定)
*版元はGallery COMMON & Akio Nagasawa Publishing
*Gallery COMMONおよび日本国内一部書店にて購入可能。オンライン・海外からの購入はwww.akionagasawa.com