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メキシコの歴史と食文化を次世代に繫ぐ。旧大統領邸の文化施設〈COMPLEJO CULTURAL LOS PINOS〉

日本に来て来て、あの店、このサービス!今回は、メキシコの旧大統領邸の文化施設を紹介。

photo: Hisako Tanaka / text: Miho Nagaya / edit: Hiroko Yabuki

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3つのポイント

1.広大な敷地を利用したコミュニティ空間。
2.古くからの食やクラフト、芸術にフォーカス。
3.小規模生産者が集まるバザールを毎週開催。

自国の歴史と食文化を次世代に繫ぐ、旧大統領邸の文化施設

西半球最大の都市公園の一つ、チャプルテペックの森の一角にあった大統領府の11ヘクタール余りが、2018年に文化施設〈ロス・ピノス〉に生まれ変わって以来、人々の憩いの場となっている。豪華な邸宅やオフィスは博物館やギャラリーになり、屋内テニスコートは音響ホールに変わり、ヘリポートは犬の散歩やボール遊びもできる芝生の広場となった。

「ここは多様な文化を享受できるのと同時に、表現の機会を得る場所でもあります」と、ディレクターのエリサ・レムス。その言葉通り、国内新旧のクラフト、ガストロノミー、音楽、アートを楽しめるイベントが定期的に開催されている。

当初は旧大統領府を公開するだけだったが、21年に敷地内にあるスペイン植民地時代の製粉工場を改修し、メキシコの主食トウモロコシの博物館〈センカリ〉を設立。食のバザールを毎週末に開いている。24年には薪火調理場とフードコートも始動し、絶品の伝統食を適正価格で味わえると評判を呼んでいる。

素晴らしい食文化がありながらも、知名度が低いコミュニティからの出店も多数。「先祖伝来の知識に焦点を当て、先住民や女性を中心とした600以上の生産者たちの経済的エンパワーメントにも役立っている」と、同施設担当のティウィ・カンポスは語る。このスタイルをメキシコの食文化の記録と普及のためのベンチマークとして確立し、各地に広げていくのが大きなゴールの一つだ。

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