3つのポイント
1.2020年に始動。韓屋改修の路面店がオープン。
2.カトラリーのほか器や照明、古美術品も並ぶ。
3.創業者は日本留学経験者。日本の職人と協働。
伝統美に革新を。韓屋を再生したカトラリーブランドの旗艦店

K-POPに韓ドラ、コスメ。韓国カルチャーは世界を席捲する勢いだが、仁川の松島(ソンド)で輸入雑貨店を営んでいたぺ・ヨンヒはこう考えた。「どの国にも自国の伝統を取り入れたいいブランドがたくさんある。でも韓国はどうだろう?」。
そこで2020年に〈HORANG〉を立ち上げ、まずは倒産した老舗包丁店の職人と協働しナイフを製作。同じステンレスで、と次に作り始めたカトラリーは、今やシグネチャーに。下部に膨らみを持たせ、使った後にテーブルに置いても汚れない、機能性を備えたデザインが話題を呼んだ。
今年2月にソウル・西村(ソチョン)に開いた初の路面店は、そんなぺの美意識を凝縮した空間だ。頭に浮かんだのは「검이불루 화이불치」(質素だが貧しくなく、華やかだが贅沢ではない意)という、朝鮮の美を象徴する古事成語。
築60年の韓屋を改修し、床材は韓国の伝統建築に見られる井の字形に。李朝時代の白磁など古美術品の傍らに、ペが尊敬してやまないイサム・ノグチの照明。壁紙を京都・西陣の唐紙作家〈かみ添(そえ)〉が手がけたりと、日本の作り手を巻き込んだ空間演出も面白い。
というのも実はぺは、日本大学藝術学部で視覚デザインを学んだ経歴の持ち主。「僕らのモットーは“日常のための彫刻を作る”こと。それはノグチの心を継ぎたいと思ったからなんです。韓国と日本の優れた技術を、次世代に繋いでいきたい。この店がその一助になれば嬉しいですね」
