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心機一転、新たな道へ。竹内由恵の、コーヒー豆と向き合う贅沢な時間

スペシャルティを“飲む”ことは当たり前の時代。いま、コーヒー好きたちは、淹れながら一歩先の“沼”にはまっているもよう。仲間とのコーヒー談議に、ラテアート、自家焙煎まで。より深く楽しむ人たちのコーヒーライフ。

本記事も掲載されている、BRUTUS「おいしいコーヒーのガイドブック。」は、2024年9月1日発売です。

photo: Chihiro Ichinose / text: Tomoka Hara

「会社を辞めて次は何をするか考えていた時に、大学時代カフェを開きたいと考えていたことを思い出して」。2019年、静岡県浜松市に移住した竹内由恵さんは「それなら焙煎から」と奮発して購入した焙煎機《コーヒー・ディスカバリー》の予熱を待ちつつそう語る。師匠と仰ぐ静岡市の〈くれあーる〉店主らに教えを請い、自分なりに焙煎を始めた。

焙煎機を構える自宅の一室。以前は手回しの焙煎機を使用していたが、自身がやけどをした際に「幼い子供にもしものことがあっては」と断念。現在のマシン購入に至る。

真剣な眼差しで予熱具合をチェックし、180℃になったら豆を投入。手元の用紙に30秒ごとの温度、ガス圧などを記入し、豆の色味や香りを頼りに火力を調整する。

「熱を入れる際、一気に温度を上げる人もいますが、私はゆっくり加熱派。正解はないので、自分の理想へ向けて繰り返す日々です」。

しばらくすると香ばしい香りが強まり、パチパチと1ハゼの音が。これが火力を落とす合図。

「今日焙煎している豆はエチオピアですが、例えばブラジルは早めに焼けちゃったり、豆によってベストが変わります。少し温度が違うだけで苦味が残ったり、思う味にならないんですよね」。

一人機械と向き合う佇まいは、タレントとしての華やかな姿とは別の顔。職人のような凜々しさがあった。

ケトルはブルーノ、コーヒーメーカーはケメックスを愛用
「本当は焙煎してから数日寝かせるのがベストですが」と断りつつ、この日の一杯を淹れてくれた。ケトルはブルーノ、コーヒーメーカーはケメックスを愛用。
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