「会社を辞めて次は何をするか考えていた時に、大学時代カフェを開きたいと考えていたことを思い出して」。2019年、静岡県浜松市に移住した竹内由恵さんは「それなら焙煎から」と奮発して購入した焙煎機《コーヒー・ディスカバリー》の予熱を待ちつつそう語る。師匠と仰ぐ静岡市の〈くれあーる〉店主らに教えを請い、自分なりに焙煎を始めた。
真剣な眼差しで予熱具合をチェックし、180℃になったら豆を投入。手元の用紙に30秒ごとの温度、ガス圧などを記入し、豆の色味や香りを頼りに火力を調整する。
「熱を入れる際、一気に温度を上げる人もいますが、私はゆっくり加熱派。正解はないので、自分の理想へ向けて繰り返す日々です」。
しばらくすると香ばしい香りが強まり、パチパチと1ハゼの音が。これが火力を落とす合図。
「今日焙煎している豆はエチオピアですが、例えばブラジルは早めに焼けちゃったり、豆によってベストが変わります。少し温度が違うだけで苦味が残ったり、思う味にならないんですよね」。
一人機械と向き合う佇まいは、タレントとしての華やかな姿とは別の顔。職人のような凜々しさがあった。