Drink

竹内涼真が仲間たちと繰り広げる、レシピ研究とコーヒー談議

スペシャルティを“飲む”ことは当たり前の時代。いま、コーヒー好きたちは、淹れながら一歩先の“沼”にはまっているもよう。仲間とのコーヒー談議に、ラテアート、自家焙煎まで。より深く楽しむ人たちのコーヒーライフ。

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photo: Kazuharu Igarashi / styling: Takashi Tokunaga / hair&make: Tomokatsu Sato / text: Emi Fukushima

「コーヒーって豆や器具が同じでも、淹れる人によって全然味が変わるんですよね。挽き目の設定やドリップ時のお湯の温度、注ぎ方、抽出時間……いろんな要素が味を決めるから、研究しがいがあって面白いんです」

そう話す竹内涼真さんがここ数年、俳優業にも負けないほどの熱量を注ぐのがコーヒーだ。以前は「特有の苦味やえぐみから得意じゃなかった」という彼。転じたきっかけは、知人でビストロ〈ル コルボオ〉店主のウエマさんが淹れた一杯だった。

「“いいから飲んでみなよ”といろんなスペシャルティコーヒーを時間をかけて淹れてくれて、なかでもルワンダ産の豆を使った一杯が衝撃的で。イチゴやアプリコット、ジャスミンのような華やかな香りで、紅茶のような軽い飲み心地。自分の知っていたコーヒーとは別物でした」

以来いろんな店に足を運び、豆の個性が際立つ浅煎りのスペシャルティコーヒーに触れるなか、興味は次第に「いかに自分でおいしく淹れるか」へ。コーヒー好きな仲間と豆を持ち寄って、さまざまなレシピでの飲み比べを楽しむようになった。この日も竹内さんは、出会いの一杯を淹れてくれたウエマさんと、コーヒーを通じて知り合った〈テメェコーヒー〉のヒロさんを招集。友人であり、師匠のようでもある2人とともに、いつもの“研究会”が始まった。

コロンビアのスーダンルーメやユーゲニオイデス、パナマのゲイシャ。それぞれが持参した個性的な品種を試していく3人。その最中、「初めて涼真さんがうちの店に来た時も、レシピについて熱心に聞いてくれた」と振り返るのはヒロさん。

「例えば僕は普段、豆を挽く前に、雑味やえぐみをなくすため、生焼けや破裂した豆を取り除く作業をします。それを教えたら、次に来た時に“練習してきました”とその場でやってみせてくれて。その姿勢が嬉しかったし、出来映えも完璧でした」。

対する竹内さんいわく「こんなに手間のかかることをする人ってヒロさんくらい(笑)。でも味がすごくクリーンになるので、ここぞという一杯を淹れる時は欠かせない作業です」

挽いた豆に残るシルバースキンは雑味の原因に。フーッと吹いて丁寧に取り除く
挽いた豆に残るシルバースキンは雑味の原因に。フーッと吹いて丁寧に取り除く。

そして手を動かしながらも、この豆のベストな挽き目はどれか、ドリップする前にペーパーフィルターは濡らすか、あの器具が気になる、など話は尽きない。こうした談議はたいてい夜通し続くが、カフェインのおかげで目はバッチリ冴えているそう。

「お酒を飲む時ですら話題はコーヒー(笑)。いまでは大事なコミュニケーションツールです」。

そう話し終えた竹内さんの視線は、ウエマさんの「次はこの豆をラテにしてみよう」の声に導かれ、次なる一杯へ。多忙な日々の隙間、時間を忘れて研究に没頭する竹内さんであった。

持参のツール。ブリューイスタのケトル、右端のグラインダーはオプションオー、パラゴンのドリップスタンドにSD1のドリッパーをセット。「手頃なものではしっくりこなくて。きちんと器具を揃えるって大事ですね」
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