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バリスタ日本チャンピオンが解説!ジャンル別、家庭用最新コーヒーツール19選

性能も、デザインも、家飲みツールが進化中。家で淹(い)れる一杯をよりおいしくする4ジャンルの最新ツールをバリスタの石谷貴之さんに試してもらった。

illustration: Hiroyuki Takenouchi / text: Koji Okano

家飲みに役立つ最新器具ガイド

解説:バリスタ・石谷貴之

GRINDER

均一な粒度で挽く、それが第一歩

「美味なる一杯への初歩は、豆の粒度を揃えて挽くことから」。微粉が多く混ざると雑味になり、粒が大きいと狙った味が出ないと石谷さん。ハンドグラインダーであれば、回転する円錐状の刃と固定された刃の間を豆が通る、コニカル式がおすすめ。「粉の断面が多角形になるので抽出の際に湯が浸透しやすい。最近はデザイン性に秀でた商品もあります」

タイムモア C3、イージープレッソ ケーウルトラ、コマンダンテ C40 MK4
(左)TIMEMORE C3
「今回紹介するミルの中で、最も低価格でコンパクト。でも36段階の粒度調節機能が付いているため、これ一台でメッシュの細かなエスプレッソから、粗めのフレンチプレスまで、目的に沿って豆が挽けます。ホームブリューをこれから始める人におすすめの商品です」。上海発の器具メーカー。
タイムモア C3/本体φ52×H147mm(ハンドルはW159mm)。11,980円(TIMEMORE日本正規代理店 timemore.co.jp

(中)1Zpresso K-ULTRA
「コマンダンテに次ぐ定番型として有名。昨今の競技会で使用するバリスタも増加中。刃がコニカル式で、また本体から粉受けを外さずとも0.02mm単位で挽き目の調整が可能です」。粉受けがマグネット式のため本体に吸着しやすく、ハンドルは折り畳み式で使い勝手もいい台湾ブランド。収納ケース付き。
イージープレッソ ケーウルトラ/本体φ60×H195mm(ハンドルはW185mm)。37,480円(1Zpresso 1zpresso.coffee/jp/

(右)Comandante C40 MK4
「昔からミルといえば、ドイツ製のこれ。バリスタなら、誰もが通過する一台ですね」。24年発売された改良版でも切れ味の鋭い刃、ニトロ・ブレードを搭載。調整ネジを変えるだけで、エスプレッソからフレンチプレスの粒度まで挽ける。「本体の持ちやすさ、ノブの掴みやすさも抜群に良いです」。
コマンダンテ C40MK4/本体φ61×H152mm(ハンドルはW160×H60mm)。60,500円(ボンタイン珈琲本社 TEL: 052-991-3241)
マルケニッヒ X54ホーム グラインダー、フェロー オーパス コニカルバー グラインダー、。オプションオー ラゴム ミニ、ヴァリア VS3
(左)MAHLKÖNIG X54 Home Grinder
プロ仕様のドイツブランド〈マルケニッヒ〉からホームユース版が登場。「家庭でエスプレッソマシンを頻繁に使う人は重宝するはずです」。粉の出口の真下にマシンのポルタフィルターがセットできる造りになっている。またエスプレッソだけではなく、さまざまな抽出に合わせて挽き目を無段階で調整できる。
マルケニッヒ X54ホーム グラインダー/W190×D280×H425mm。オープン価格(Melitta Japan melitta.co.jp

(中左)Fellow Opus Conical Burr Grinder
「コニカル式の刃が大きく、粒度が揃えやすい。加えてその刃の調整具合も数値化されているので、初心者も扱いやすい。作動ボタンが手前にあるのもいいですね。おまけにエスプレッソから水出しまで対応可で、動作音も静か。エントリーモデルとしておすすめです」。サンフランシスコ発のブランドならではの佇まい。
フェロー オーパス コニカルバー グラインダー/W129×D210×H268mm。33,000円(Kigu)

(中右)OPTION-O LAGOM MINI
メルボルン発のデザイン・エンジニアグループが設計。「この省スペース設計。大きさだけ見れば、コマンダンテが電動グラインダーになった錯覚に陥ります」。アルマイト処理が施されたボディがスタイリッシュ。刃はコニカル式。マグネットで固定されたカップは振動でずれないため、粉のこぼれを最少にする。
オプションオー ラゴム ミニ/W65×D95×H240mm。65,000円(R&D ESPRESSO LAB TEL: 06-7410-8237)

(右)Varia VS3
ヴァリアは香港のブランド。「刃はコニカル式で無段階調整が可能。極細挽きのエスプレッソ用から粗挽きの水出しまで、さまざまなメッシュに対応しています」。付属のシリコーンベローをホッパーに被せてプッシュを繰り返せば、風圧によって挽いた豆の大半が真下に置いた磁石付きのドージングカップに落ちるため、マシンに残る粉を大幅に減らせる。
ヴァリア VS3/W90×D147×H310mm。52,800円(Kigu)

INNOVATIVE BREWER

抽出器具が、多様に進化中

「インドネシア発の《SD1》など円錐形の進化もすごいですが、一台で透過式や浸漬式を網羅するスマートドリッパーや、ドリッパー単体でも、底面の交換が可能だったり、内部に特殊なリブが付いていたり。いま、最も変革を遂げているのは、抽出のツールかもしれません」。店に近い味わいのエスプレッソが抽出できる手動マシンも登場中だ。

Flair 58x
Flair 58x
アメリカ発の家庭用のエスプレッソマシンでありながら、業界標準の58mmポルタフィルターを搭載。また頑丈なフレームとT字形のグリップレバーを備えているため、高圧での抽出が可能だ。「初めて使用しましたが、お店の味わいが再現できますね」。業務用マシンの9気圧を超える、10気圧で圧力をかけることができる。
フレア58x/W130×D510×H340mm。85,800円(Flair Espresso Japan flairespresso.jp
グレイカノドリッパー
Graycano Dripper
スペイン発で内部にリブ(突起)が螺旋状に並んだ、珍しい形状。「濡れたペーパーがピタッと張り付くので、内部で湯が均等に回って粉全体に浸透しやすいです」。熱伝導性の良いアルミのボディはすぐに高温になることで、抽出の過程全体を通して、高い温度をキープしてくれる。熱くなるためスリーブ(別売り3,300円)を付けての使用を推奨。13色のカラフルなスリーブが揃う。
グレイカノ ドリッパー/底直径φ98×H66mm。11,000円(Kigu)
グレイカノドリッパー
グレイカノドリッパー
ヴァリア×クラス FLOドリッパー
VARIA × KURASU FLO DRIPPER
京都のコーヒーショップ〈クラス〉と、香港の器具メーカー〈ヴァリア〉がコラボ。ステンレススチール製のドリッパーで、底面が取り外し可能。3枚のスクリーンを駆使すれば、湯の流量速度が変えられる。「味をすっきりさせたい時は“Kurasu(Fast)”を、コクを出すなら“Slow_1”を選択するといいですね」。3枚はもともと付属するが別売りのスクリーンも4種類ある(各2,640円)。
ヴァリア×クラス FLOドリッパー/底直径φ45×H85mm。9,600円(Kigu)
ヴァリア×クラス FLOドリッパー
ヴァリア×クラス FLOドリッパー
エアロプレス コーヒー メイカー クリア
AeroPress® Coffee Maker Clear
2025年で20周年を迎える抽出器具。ペーパーとコーヒー粉をセット。湯を入れて攪拌(かくはん)したら、筒状の蓋を被せて、上から押して圧力をかける。「ドリッパーとエスプレッソマシンの長所を併せ持った存在です。湯量60㏄に細挽きの粉20gでプレスすれば、家庭で気軽にエスプレッソの味を再現できます」。本体のカラーが透明になり液色も見やすい。
エアロプレス コーヒー メイカー クリア/W112×D112×H194mm。12,000円。(小川珈琲 oc-ogawa.co.jp
ゴート ストーリー スマート コーヒー ドリッパー ジーナ
GOAT STORY smart coffee dripper GINA
アメリカから2018年に日本で発売されるや、高いデザイン性と機能性で注目される。自分の店に導入するバリスタも多い。「セラミックファネル下部のバルブを開閉すれば、プアオーバー(透過法)、フレンチプレス(浸漬法)、コールドブリュー(水出し)と、3つの抽出法が可能です」。スマートスケールも内蔵、専用のアプリもある。
ゴート ストーリー スマート コーヒー ドリッパー ジーナ/W163×D135×H345mm。41,800円(ウェルリッチ goat-story.jp

KETTLE

湯量に温度。注ぎが味を決める

おいしいコーヒーを淹れるうえで大切なのが、「粉と湯の正確な量を守ること」。「豆によって違いますが、おおよそ粉14〜15gに対して湯210〜225g(粉:湯=1:15)が理想です」。そして、ケトルの注ぎ口も重要になってくる。「注ぎ口が細い、グースネックのケトルを選びましょう。細い線で出すことで、湯が粉に均等に浸透していきます」

ブリューイスタ アルティザン グース ネック バリアブルケトル、ボ ヴィータ グースネック ケトル、フェロー スタッグ EKG
(左)Brewista Artisan Gooseneck Variable kettle
「僕がコーヒーを監修する〈æ(アッシュ)〉」でも、このケトルを使用します。タッチパネルが見やすく、操作性に優れています」。世界中のバリスタからのフィードバックを製品作りに生かしており、街中のカフェでもよく見かける。温度設定の幅も40〜100℃と広い。
ブリューイスタ アルティザン グースネック バリアブルケトル/W150×D290×H195mm(ケトル)。1L。27,830円(スピン brewista.jp

(中)bonaVITA Gooseneck Kettle
「バリスタにも愛用者が多い、この商品。傾ける角度を大きくするほど太くお湯が出るので、カッピングの際には重宝します。逆に相当に傾けなければ、細くお湯が出続けるので、初心者向けのケトルとも言えます」。60℃から100℃まで1℃単位で温度設定が可能。最大1時間の保温機能付き。
ボナヴィータ グースネック ケトル/W143×D285×H190mm(ケトル)。1L。20,680円(FBCインターナショナル TEL: 03-3436-2575)

(右)Fellow Stagg EKG
「シンプルでフラットなデザインゆえに、置く場所を選びません。あと取っ手の出っ張りに親指を添えて握ることで、片手で抽出できます」。注ぎ口が細く、またカーブしていることによって、湯も自然と細く出せる。湯温は57〜100℃の範囲で設定でき、その温度のまま最大60分間キープすることも可能だ。直火式もある。
フェロー スタッグ EKG/φ145×H175mm(ケトル)。0.9L。25,960円(Kigu)

OTHERS

最後の詰めまで気を抜くなかれ

おいしいコーヒーを突き詰めるなら、細部にまで注意を払いたい。「特にスケールにはこだわりましょう。豆を買う際にはロースタリーにその豆に適したレシピや1回で注ぐ湯量を確認し、しっかり測ってみてください。この工程でおいしさが決まります」。注目度の高いコームやドリップスタンドもチェックしたい。

カッツェ
Katze
台湾の〈Mx. COOL〉によるスケール。「実はタッチパネル部分は中に収納できてしまう。スケールとは思えないデザインが面白いですよね」。ボタン一つで簡単にディスプレイがオープンでき、一方、閉じておけば本体を衝撃から守ることができる。また手のひらにのるサイズのコンパクトさながら、計量面は高温にも耐え得るマットな質感のアルミ合金で、最大計量は2,000g。
カッツェ/W120.5×D120.5×H21.7mm。23,500円(Equal Coffee equalcoffee.jp
アカイア パール モデルS
acaia Pearl Model S
「〈æ〉でも大活躍しているアメリカ発のスケール。タッチパネルの表示が見やすく、何より空調が当たると数値が動くくらいに感度が高いんです」。同じ条件における抽出時間を日々アプリに記録して、理想の味を追求しています」。広くバリスタに使用されているスケールだが重量や時間を音声で知らせてくれるため、コーヒー初心者がハンドドリップの技術を向上させるのにも適している。
アカイア パール モデルS/W160×D160×H32mm。32,670円(acaia公式 jp.acaia.co
ヌークレアス パラゴン V2
Nucleus Paragon V2
ここ数年多くの店で見かけるドリップスタンド。2015年のバリスタ世界チャンピオンのササ・セスティックらが開発した。「業界のトレンドが、コーヒーを冷やすこと。熱は香りを奪うため、豆を冷凍する人もいます。この最上段にドリッパーをセットして抽出すれば、落ちた液体がアイスロック(金色のボール)に当たり、温度が下がって香気成分を閉じ込めてくれます」。
ヌークレアス パラゴン V2/W165×D120×H260mm。19,800円(FBCインターナショナル)
バリスタ ハッスル ツール ザ コーム
Barista Hustle Tools The Comb
「コームはバリスタの仕事道具。エスプレッソマシンのポルタフィルターにのった粉は粒度が細かいので、ダマにならないよう針先で均等に整えます」。このコームはドリップコーヒーにも応用できる。「粉をドリッパーに入れた後、コームで表面をならせば、さらに湯がよく浸透するんですよ」。ハンドル部分はシリコン製。針先は丸まっている。針は30本同封されスペアにも困らない。
バリスタ ハッスル ツール ザ コーム/D30×H110mm。7,810円(FBCインターナショナル)