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住所非公開。バリスタ世界チャンピオンが手がける最高峰のコーヒーのフルコース〈珈空暈〉

コーヒーのラグジュアリー化の流れの一つが、コース形式の盛り上がりだ。豆の品種や産地、プロセスに着目して飲み比べたり、最先端の抽出方法で提供したり。中でも一般には流通しない稀少ロットの豆を深掘りする、最高峰のコースと言えるのが、WBCでアジア人初のチャンピオンとなった井崎英典さんが2023年に開店した〈珈空暈(こくうん)〉である。

photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Ku Ishikawa

「品評会で出される稀少な豆を、飲み手に開く場所にしたいんです。それも、ただおいしく淹れるだけでなく、コースでは1つの豆に絞り、様々な抽出方法や、副食材と組み合わせることで、よりディープにそのコーヒーの魅力を伝えていきます」と、井崎さんと交代で店に立つバリスタの鈴木樹(みき)さんは言う。

この日の豆は、バリスタの世界大会でも頻繁に使用されるパナマの生産者、ジャミソン・サベージによるもの。彼が経営する農園のなかでも、標高2300m、平均気温15℃という、コーヒーノキにとって最も過酷な条件のアイリス農園で栽培される、まさに珠玉のロットである。

「良いコーヒー豆ほど味わいは複雑。だから副食材と掛け合わせて、個性をよりわかりやすくします。例えば、メニューの一つであるモクテルでは、コーヒーが持つトロピカルな味わいを強調するために、西表島(いりおもてじま)のマンゴーを使っています」

店を後にする頃には、これまでいかに“なんとなく”コーヒーを飲んでいたかに気づく。飲み手のコーヒーに対する興味やリテラシーが、自然と上がる装置がコース形式なのだ。

1杯目:Sparkling Coffee

東京〈珈空暈〉ペパーミントを漬けた炭酸水
自家製の梅のジュレに、ペパーミントを漬けた炭酸水、フィルターで濃く抽出したコーヒーを組み合わせた一杯。23年の冬はグリューワインをオマージュし、コーヒーをドライフルーツと煮込んだものを提供したそう。

2杯目:Filter by extraction chilling

3杯目:Mocktail

東京〈珈空暈〉モクテル
10枚のパイナップルミントに、エスプレッソを3ショット、マンゴーの皮と種の発酵液に、トマトの旨味エキスだけを取り出した液体と、乳酸を1滴加え、ミキシングしたモクテル。
東京〈珈空暈〉モクテル
仕上げに浸透圧で作ったマンゴーのシロップをのせる。

4杯目:Americano

東京〈珈空暈〉店内
急須のなかで一緒に混ぜ合わせて提供される。飲み心地は非常に爽やかで、余韻は長く甘い。

5杯目:Umami Milk

東京〈珈空暈〉シグネチャーのカフェラテ
酸味、甘味、苦味、塩味で構成されるカフェラテに、昆布のだしやトマトなどから抽出した旨味を加え、基本味をすべて揃えたシグネチャー。

6杯目:Teamericano

茨城〈吉田茶園〉烏龍茶
飲み口で香りが広がる陶器のお碗。