OKINAWA COFFEE NUMA DAY
飲み、学び、ヌマる。沖縄のシーンは一歩進んでいる
2023年に沖縄本島中南部・沖縄市で開催された『オキナワ・コーヒー・ヌマ・デイ』。運営の中心は、この地でスペシャルティコーヒー専門店〈豆ポレポレ〉を営む仲村良行さんとえりなさん。焙煎も手がける良行さんは、その技術を競う世界大会で2位の成績を収めるほどの腕前の持ち主。だから、フェスにも“競技者”目線のイベントが。
「競技という意味でわかりやすいのはエアロプレス大会。国内外で各種競技のジャッジを経験した方に、審査と終了後のフィードバックをしてもらいました。焙煎者としてコーヒー豆の魅力も知ってほしくて、トークイベントでは生産者に登壇してもらいました。見て、聞いて、飲んで、“ヌマ・デイ”の名前の通り“コーヒー沼”に浸かってもらいたくて」と良行さん。
作り手からプレーヤーまでこぞって参加するのは、良行さんの世界的な活躍があってこそ。実は、2人が主催するイベントはこれが初めてではない。「16年に『オキナワコーヒーフェスティバル』を開催しました。
きっかけは映画『ア・フィルム・アバウト・コーヒー』の上映をしたかったから。作品のテーマである“シード・トゥ・カップ”の世界の魅力を見て知ってもらうことを軸に、コーヒーの提供はもちろん、焙煎についての勉強会なども行って」とえりなさん。こうした学びの場を作ってきたからこそ、深みにハマれるフェスが生まれたのだ。
金澤コーヒーフェス
誕生、震災、そして次回へ。金沢のこれからが見逃せない
「2024年の元日に能登半島地震が起きてから、募金活動や現地での炊き出しなど、コーヒー屋としてできることを行ってきました。ようやく道路が整備されつつあるくらいで、復興はまだまだこれからですね」と山本史弥さん。『金澤コーヒーフェス』の実行委員長で、金沢の〈ノンストップ・コーヒースタンド&ロースタリー〉の店主でもある。
「この地震が理由で、2024年は開催しないことにしました。でも、来年はやりますよ!」。再び動きだしたこのフェスの誕生は23年のこと。
「20年に店をオープンした頃から“金沢にコーヒーフェスがあったらな”と、ぼんやり考えてはいました。仙台や東京のフェスへの出店も面白かったですしね。そんななか、福井のフェスに参加したときに“来年は金沢でやりたい!”と雑談をして。その話が噂のように広がり、数日後に友人(のちの実行副委員長)に“一緒にやりましょう!”と声をかけてもらって(笑)」。
翌月には会議が始まり、約半年後、開催に至る。「まず考えたのはコーヒーに特化することでした。金沢にもコーヒーが飲めるようなイベントはあるんですが、せっかくだから違うスタイルでやろうと“フェス”という名前にして、フードは最低限に。ブリューイングの大会も開催しました」。その後、少しずつスペシャルティの専門店も誕生している金沢。そのシーンはますます盛り上がっていきそうだ。
HITACHINAKA COFFEE FESTIVAL
地元を盛り上げたい。その先に行き着いた、日本有数の大型フェス
日本全国からコーヒー・飲食等約100のショップが一堂に集まる『ひたちなかコーヒーフェスティバル』。実行委員長は水戸の焙煎所兼カフェ〈常陸ノコーヒー〉に携わる関山大介さん。店との付き合いのきっかけこそ、このフェスを始めたことだという。
「15年ほど前に地元である茨城のひたちなかに戻ってきました。当時から“この地を盛り上げたい”と、音楽イベントやドライブインシアターなどを企画・開催してきました。ただ、この町は海沿いに比べて内陸側での催しが少ないんです。そんなときに注目したのが〈親水性中央公園〉。つまり場所ありき。それで、周りのロースターの方などに“コーヒーフェスなら出たい!”と言ってもらって、面白そうだなとスタートしました。
友人でもある〈リーブスコーヒー〉の石井康雄さんが出店してくれて、広く知ってもらえたと思っています。おかげさまで今のような規模にまでなりました。このフェスを軸に、ひたちなかを一層盛り上げていきたいです」

COFFEE CITY FESTIVAL SAPPORO
ショップはもちろん街を丸ごと招く、ゲストシティとは?
2024年6月に行われた第7回は熊本を取り上げ、札幌にその地のショップが勢揃い。といったように、「ゲストシティ」を設定するのがコーヒー“シティ”フェスティバルたる所以(ゆえん)。事の始まりは2021年。札幌PARCO・営業課の土屋雅幸さんと、テレビ北海道のイベント事業を担当していた田仲晃治さんは、〈札幌PARCO〉での新たな催しを模索していた。
札幌と米・ポートランドが姉妹都市であること、そして2人がコーヒー好きであることを機にイベント案が浮上。そこで相談を持ちかけたのが、この地でカフェ〈ザ リレー〉を経営するcommono株式会社の矢野奨(しょう)さんだった。
「実は札幌のコーヒー消費量は全国屈指なんです。でもスペシャルティはあまり浸透していなくて。全国からお店が集まる『珈琲マルシェ』はすでにあるから、都市に注目しようと。ポートランドをはじめ、コーヒーと街のカルチャーには密接な関わりがある。姉妹都市よろしく、このフェスを通して各都市と交流を深めていきたいですね」

YOKOHAMA COFFEE FESTIVAL
若きバリスタが生み出す、変幻自在のスタイル
2020年以降に急増するコーヒーフェスだが、一足早く、19年にスタートしたのが『横浜コーヒーフェスティバル』。立ち上げたのはこの地元・横浜でコーヒースタンド〈ピーチコーヒー〉を営む百崎佑(ももざき・ゆう)さん。当時20歳だった。
「あるのはパッションだけ(笑)。『東京コーヒーフェスティバル』のような飲み比べが楽しめるイベントがやりたい!と。最初の壁は場所を借りることでした。共催の道を探っていると『ホッチポッチミュージックフェスティバル』の一角を貸していただけて。それが始まりですね」。コロナ禍の休止を経て、22年は大盛況、翌年には〈横浜ハンマーヘッド〉で初単独開催。
「出店者とのつながりもできて、素敵なバリスタの方々と知り合えるようになりました。だから、出店は基本公募だけ。自然といろんなお店が集まるのが理想的だなって」。次なる目標は公園で初の単独開催。夢が広がる一方で、より小規模なマルシェスタイルで開催したり、商業施設との共催も模索中。チャレンジは続く。
