秩父の山奥に日本全国から旧車が集合。ピクニックという名の別世界へ

エンスーなだけなら招待されない。ピクニックをオシャレに楽しめる旧車オーナーの集まりがある。ここは埼玉県秩父郡の皆野町。小学校の跡地が、1日だけタイムスリップしてしまった。

photo&text: Kazuyuki Ozawa

始まりは趣味のガレージ。
今は地域おこし協力隊として

初夏のある日、秩父の山奥に突然テーマパークのような光景が広がった。その名も『皆野町サンデーピクニック』。クラシックカーで集まったオーナーたちが、思い思いのセッティングでピクニックを楽しむというイベント。

このイベントを企画した奥村純一さんはカメラマンでありライターでもあり、時には雑誌編集もこなすマルチな才能の持ち主。そんな奥村さんだからこそ実現出来た皆野サンデーピクニック。なぜいまこのレトロな響きのピクニックを開催したのでしょう。

「実はぼく、東京と皆野との2拠点生活をおくっているんです。クルマ好きなら誰もが思う、マイガレージで過ごすクルマとの関係。ぼくの場合、台数がちょっと人より多かったので、それを実現するために辿り着いたのがここ皆野町だったんです。

日野沢川
かつて子供たちが遊んだ(であろう)日野沢川。この日は大人達が、涼を求めて降りてきた。

置き場を借りて、その恩返しに何かできたらいいなと思い、総務省の『地域おこし協力隊』の制度を利用して、皆野町を盛り上げたいと思ったんです。この町のいいところを伝えるのに、ぼくならではのやり方で地域とそれ以外を結びつけつつ、双方が楽しめるイベントは何かを考えていたんですよね。

車が大好きだし、もともと仕事の関係でクルマ好きの友人が多かったから、やはりクルマプラス◯◯な遊びがどんどん思いついちゃったんです(笑)

目的は町の魅力を知りながら、
思い切り楽しんでもらうこと

このピクニックの前に町の中を走るラリーイベントを開催しました。一般の人が持つラリーのイメージってどうですかね? 派手なカラーリングのクルマが土煙を上げながら猛スピードで走り抜けて行くシーンとかですよね。

ぼくがやったのはそういうのじゃなくて、皆野町のいいところを制限速度を守りながら、ゆっくり走るノンビリとしたものです。走る人は景色を楽しんで、沿道で見ている人は優雅に走るクルマを眺められる、そんなラリーなんです」

SNSを通じて意見を出し合って、
理想のイベントのあり方を探る

そして今回はピクニックスタイル。クルマを止めて、その横にシートやブランケットを敷いて、ちょっと早起きしてつくったサンドイッチとポットに入れたコーヒーで一服。ピクニックは火を使わないから、ここでは煙モクモクのバーベキューはNG。そもそもここに集まった車にも、そういったルールや条件があるのだろうか。

「参加条件というか、ぼくの趣旨に賛同、納得してくれた人達が集まってくれました。車のマニアックな話もオーナーにとっては楽しいんですが、家族や友達も連れてきて、オシャレなピクニックの雰囲気を含めて、大自然の中でのんびり楽しめたら最高じゃないですか。もちろん、ここに至るドライブで、皆野町の魅力を知ってもらうのが一番ですが。

募集はまずぼくがやってるSNSで小出しに発信して、少しずつ告知して啓蒙したんです。昔のピクニックの画像とか入れたら、友達達がそれをおもしろがってくれたんです。

さらにコメントが入って、SNSの中で理想のピクニックのスタイルがカタチが徐々に見えてきた。まずは第1回目として40台ほど、ぼくがやりたいことを理解してくれた友人達に集まってもらったのが今回のイベントです」

「県道から一台一台橋を渡ってもらい、クルマを並べたこの場所、もともとここには日野沢小学校が建っていたんです。皆野町の子供達が登校していた場所に、また人に集まってもらうのもいいのかなって思い、ここを選びました。なんと今回この小学校に通っていた卒業生も参加してくれたんです。

いちばん旧いクルマはイギリスの戦前車(1928年)のオースチンセブンや国産車のブルーバードは1966年式、クルマメインのイベントですが、バイクもちゃんとピクニックスタイルで参加してくれました。

車好きとして知られる長岡亮介も、
イベントの成功を見届けようと会場入り

長岡亮介
シークレットライブとして登場した長岡亮介さん。その名前が告げられたときの参加者の驚きの表情といったら……。

あと秩父を中心に音楽活動されている『ミルクオアダーク』と今回事前の発表なしにシークレットゲストとして『ペトローズ』のボーカルとギターを務め、ご自身も大のクルマ好きとして知られている長岡亮介さんにも参加していただき、すばらしいライブをおこなってもらいました。

今後も、クルマと町を楽しめるイベントで皆野町を盛り上げて行ければと思っていますので、ラリー、ピクニックに加え、また違ったイベントを考えて、皆野町発の楽しいクルマイベントを、この先も続けていくつもりです」

長岡亮介さんのコメント

「今日の主催の奥村さんとは以前雑誌の取材で知り合って、その時はたしか自転車のインタビューだったのかな。けどお互いクルマの趣味でも話をするようになり、今回声かけてもらい演奏というかたちで参加させてもらいました。すごいですよね、みなさん乗って来てるんですもんね。どれも気になるものばかりなんですが、あのルネボネジェットは格好良かったですね。欲しいなあ。あと、イノチェンティのミニも気になりました。ぼくのクルマ好きは父の影響が大きいですね。父が初代のハイラックスサーフや、当時J-TOPと呼ばれていたソフトトップのパジェロに乗っていたこともあって、ぼくの最初のクルマも同じ四駆のツーストのジムニーでした。今はシトロエンのDSに乗っていますが、旧車であるかどうかはそれほど気にしないので、フジロックの会場まで行ったこともありますよ。途中霧が出ちゃったときには、首ふりのヘッドライトが役に立つんですよね(笑)。クルマって維持費が高いとかそのものの値段も安くはないですが、とても身近な存在だと思うんですよ。趣味と言えるのはクルマ、自転車、仕事でもある音楽(楽器)。こんどこのイベントがあれば、ぜひ自分のクルマで参加したいです」

皆野町サンデーピクニックに
集まった名車たち