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世界からお届け!SDGs通信 トロント編。難民の各家庭にボランティアを配置する慈善活動

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はトロントから!

text: Hatsuki Matsui / edit: Hiroko Yabuki

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1年で40万人以上の難民を受け入れ!カナダへの統合をボランティアが支援

カナダは積極的に難民受け入れを行う国の一つで、総人口の約4分の1が移民で構成される。18世紀に“ブラックロイヤリスト”(アメリカ独立戦争で英国側について戦ったアフリカ系の人々)を受け入れたことに始まり、各戦争を経て世界中から難民を受け入れてきた。昨年1年間にカナダに流入した移民の数は、なんと43万人。カナダ政府の発表によると2023年はアフガニスタンやイランに加え、地震の影響でトルコとシリア、さらにアフリカ諸国やインド、パキスタンからの申請が多いという。カナダ国民の高齢化に伴い、若年から中高年層の人口を補填することも難民受け入れの目的の一つだ。

〈Together Project〉は流入する難民の統合、つまり国や既存の国民に彼らが馴染むことをサポートする。親団体は慈善団体MakeWay。2016年のシリア内戦により、カナダはシリア人2万5000人を難民として受け入れた。その際に統合サポートの必要に駆られ、同年同プロジェクトが発足。現在はカナダに流入する世界中からの難民を支援している。共同設立者の一人Andrew Lusztyk氏の両親は、1980年代初頭にポーランドからカナダへ移住した当事者。生活を立て直しに苦労した両親の経験から、この活動のインスピレーションを得た。

同団体の“Welcome Group Program”では、随時200〜300名のボランティアが活動している。各ボランティアは使用言語や独自の経験に基づき、難民家庭に振り分けられ6ヵ月間の支援をする。金銭的なサポートはできない決まりとなっており、住居選定、就職、教育、言語のサポートにより日常生活の立ち上げを応援する。難民同士がコミュニティを築けるよう、ピクニックや音楽イベントなど各家族の交流機会も提供。その結果、到着時にサポートを受けた難民が、自身の経験を次に伝えるためにボランティアを志願する循環も生まれている。「異なる人々がいて、異なる文化が存在する。それが世界というものです。これを受け入れることで得る恩恵はかけがえのないものです」とAndrew氏。

一方でトロントをはじめ都市部の家賃高騰もあり、難民の宿泊場所が見つからないことや、言語の違いで職が見つからず自立に時間がかかることも問題になっている。カナダにおいても難民は受け入れて完結するものではく、その後社会を構成する一員となることが求められるのだ。彼らが社会と調和し、自立できるか。そして、そのために献身的なサポートを継続できるのか。難民問題は理想と現実の間に揺れている。

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