パリと京都、共通する〈cité〉で新しい門出
古着+カフェの店〈cité〉。運営しているのは大阪出身の吉田明史さんと、台南出身の林暖婷(リン ダンテイ)さんのカップル。13年間、パリで暮らし2023年に京都へ。五条の住宅地にある古民家を改装し、10月にオープンした。
吉田さんいわく「コーヒーを飲みながら、服をゆっくり見てもらえる。そんな店を京都でやりたくて。街の真ん中を流れている鴨川はパリのセーヌ川みたいでしょ。京都とパリは姉妹都市だというのもよく分かるし、もともと京都に親しみがあったんです」。
程度の良いパリのヴィンテージ古着を京都で
店内奥は古着の空間。およそ100年前のアトリエコートから、50年代の〈クロエ〉、そして80年代の〈ジャン=ポール・ゴルチエ〉や〈Y’s〉のジャケットなど、吉田さんがパリで買い付けた古着が並んでいる。
もともとパタンナーの勉強をしていた吉田さん。修業のかたわら「特に商売するつもりはなかったんですが、収集癖があるみたいで(笑)」、現地のあらゆる古着店を巡り「ヴィンテージの服を集めていた」のだそう。
古着を買い付ける際は、デザイン性だけでなく、縫製など裏の仕様の丁寧さも肝となる。吉田さんいわく「勉強していたこともあって、服を作る側からの目線ですね。古着と言っても、例えばアメリカのヴィンテージTシャツはボロボロでも人気だったりしますよね?それは、いわばカルチャーを楽しむためにお金を払っている感じだと思うんです。けれど、ヨーロッパの古着店はそうではなくて。ブランドの服でも穴が空いていたらダメ。実用性が大切なんです。だからコンディションの良い服を置くようにしています」。
「小さな幸せ」から始まったコーヒー研究
一方、カフェスペースを担当する林さんはフルートの音楽修業でパリへ。「音楽院で1日8時間くらい練習していたんですけど、休憩中に飲むコーヒーが好きで。それが私にとって小さな幸せでした」。そして、オスロ旅行の際、現地のスペシャリティコーヒーに開眼。以降「とても真剣に」コーヒーの研究を始めたのだそう。
カフェでは自家焙煎のコーヒーを軸に、台北の老舗茶舗から仕入れる台湾茶も。それに、手作りのパイナップルケーキも見逃せないところ。カフェのテーブルや椅子、そして古着の什器もすべてフランス産のヴィンテージ。古民家のムードを活かすため、あえて改装し過ぎなかったという空間に違和感なく溶け込んでいる。
もちろんカフェの利用だけでもかまわない。けれど気付けば試着をしていたり。その逆もまた然り。コラボというより、古着とコーヒーが京都の細長い町家でシームレスにつながっている。大きな窓から入る陽射しも心地よい。五条散歩で欠かせない場所となるのは時間の問題だろう。