北海道の豊かな自然が
多彩なチーズを育む。
大泉洋
初めて村上さんのお宅に伺ったとき、ご馳走してくれたチーズフォンデュがもうムチャクチャおいしかった。あんなに旨いチーズ、食べたことがない。
村上健吾
シンプルにうちのチーズと白ワインだけなんですけど。
大泉
具材もまた旨いんですわ。大きなエビや鶏つくねがあったり、パンがあったりね。
村上
うちはフォンデュ鍋がないので土鍋でね。楽しかったなぁ。
大泉
トムとジェリーでしか見たことないような大きなチーズをガリガリ削ってね。贅沢な食べ物ですよねぇ、フォンデュって。
村上
僕は、せたなで映画を撮るって聞いたとき夢のようでした。
大泉
演技とはいえ、酪農とチーズ作りを一通りやらせてもらって、月並みだけど大変な仕事だと思いました。牛も育てながらですもんね。
映画で観る分にはいいと思うし、憧れるけど、自分には絶対できない。こんなこと言うとガックリする人がいるかもしれないけど、私、動物があんまり得意じゃないんです(笑)。
村上
監督から、牛のブラッシングをと言われたとき、大泉さん、固まっていましたよね(笑)。だから、フォークを持って寝藁の交換作業に変更してもらった。
大泉
それでも、勇気を出して牛に近づいて演技した。その役者魂を評価してもらいたい(笑)。
村上
いきなり牛飼いになるのは難しいですよね。
column:1
グラスフェッドミルクの
風味が生きる一品。
日本海を望む高台の工房で、健吾さんが作るのは、モッツァレラ、モッツァレラを乾燥熟成させたスカモルツァ、6ヵ月以上熟成させることでナッツのような風味を持つハードタイプのカリンパの3種。
カリンパは、2014年の『BRUTUS』お取り寄せ特集「国産チーズ部門」でグランプリに輝いている。お母さんが手作りするケーキやアイスクリームも人気。お取り寄せのほか、工房でも購入可。http://reprera.cart.fc2.com
column:2
山あいで放牧した
牛の乳でチーズ作り。
村上牧場では自然循環型酪農を基盤に完全放牧を実践。春から秋までは山あいに牛たちを放して、化学肥料を使わぬ牧草を食ませ、朝夕2回搾乳に連れ帰る。
両親はホルスタインを飼育して生乳の出荷をし、健吾さんはチーズ用にブラウンスイスとジャージーを飼育。ブラウンスイスのミルクは上質のたんぱく質を含み、チーズに最適。ジャージーは脂肪分が多く、ミルクが黄色いという。季節や牛の体調により味わいは異なる。
大泉
今回、いろいろ食べてみて、北海道産のナチュラルチーズは本当においしいと思った。だから、空港とかで売ってるチーズを見るのが楽しくなりました。
食べたことがないのがあれば買ったり。おいしいチーズがバラエティ豊かに揃っていることは、北海道人として誇り。僕なんか何もしてないのに、自慢してますからね(笑)。
村上
作り手としては、伝えてくれる人がいるだけで心強い。
大泉
撮影で使ったチーズを家に持って帰ったんだけど、妻も娘も大喜び。「おいしいねぇ」って。ヨーロッパみたいに毎日食べるわけじゃないけど、楽しいですよね。
村上
日本も食文化が豊かになってきましたよね。そんな食卓の一つの彩りとして、チーズが役に立ったらいいなと思っています。
大泉
映画の中にも出てくる、生産者仲間が持ち寄った食材で、有名シェフたちが料理を作る会。食材への敬意と感謝があふれる料理は、どれも素晴らしかった。「そらのレストラン」というより、「世界一のキッチン」という感じ。
村上
あっ、僕、搾乳があるのでそろそろ失礼します。
大泉
おっ、夕方の搾乳ですね。新幹線ですか。お疲れさまです。また、北海道で会いましょう!
column:3
家族とともに
暮らし営む幸せ。
村上牧場の酪農業は、1968年から続く家族経営。健吾さんは高校卒業後に札幌へ出たものの、田舎の環境が肌に合っていたと気づき、実家に戻ると、両親は牛を牛舎につなぎ止めて飼養するつなぎ飼いから放牧酪農へと転換していた。
その酪農に共感し跡継ぎに。自分なりの道をと、チーズ作りも始める。朝夕搾乳し、自家牧場産ミルクの風味を生かした一品を製造。いずれもファンが多く、入手困難な状態が続いている。
column:4
仲間との絆と新しい
ライフスタイルを描く。
大泉洋さんが主演する映画『そらのレストラン』は、「地域と人と食」に着目した「北海道映画」シリーズの第3弾。
道南の日本海に面したせたな町で循環農業に取り組む自然派農民ユニット〈やまの会〉をモデルに、チーズ作りや仲間との絆、ひいては新しいライフスタイルについて描いている。
監督は深川栄洋さん。本上まなみさん、岡田将生さんらが脇を固める。19年1月25日から全国公開。配給:東京テアトル。