Listen

Listen

聴く

カネコアヤノ、忌野清志郎、スピッツ。あの人も猫ソングを歌ってる

気高さ、自由、愛。ミュージシャンたちが猫を通してさまざまな心模様を歌う象徴的な“猫ソング”を、猫好き音楽ライターが解説。

本記事は、BRUTUS「猫になりたい。」(2024年10月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

text, select: Ryohei Matsunaga, Katsumi Watanabe

文・選 松永良平、渡辺克己

カネコアヤノ

「腕の中でしか眠れない猫のように」

夜の帳が下りる頃には
猫のようさ
帰りを待っている
素っ気ないふりした態度で

「腕の中でしか眠れない猫のように」 カネコアヤノ
作詞/カネコアヤノ (2020)
気まぐれに見えて、実はルーティン化している行動。猫とパートナーを重ねたラブソングかと思いきや、実は「本人と愛猫による実生活の描写ではないか?」と思えるリアルな歌詞がグッとくる。ルーズなバンドサウンドで表現した、2020年発表のシングル。(渡辺)

中川翔子/細野晴臣

「ネコブギー」

ネコネコ・ニコニコ・ニコブギー

「ネコブギー」 しょこたん♡はるおみ 作詞/細野晴臣 (2015)
2015年放映の猫アニメ『おまかせ!みらくるキャット団』テーマ曲。愛猫家・中川翔子と細野晴臣によるデュエット。「ネコネコ・ニコニコ」という言葉遊びも、猫歩きのリズム=ブギーなリズムも、細野晴臣らしさが猫とぴったりマッチしていて楽しい。(松永)

忌野清志郎

「ぼくの目は猫の目」

ぼくの目は猫の目 暗い中で光るのさ
ニャオ ニャオ ニャオ ニャオ

「ぼくの目は猫の目」 忌野清志郎 作詞/忌野清志郎 (1992)
ソロ活動を開始した忌野清志郎が、1992年にNHK『みんなのうた』に提供した、かわいらしい猫ソング。猫になりたくて暗闇で目を凝らす子供と、猫自身の気持ちとが曲の中でスイッチするのが最高。音楽の中でなら、僕らはいつだって猫になれる。(松永)

スピッツ

「猫になりたい」

猫になりたい 君の腕の中 寂しい夜が終わるまでここにいたいよ

「猫になりたい」 スピッツ 作詞/草野正宗 (1994)
猫ジャケアルバムの金字塔『名前をつけてやる』やシングル「猫ちぐら」など、猫モチーフの多いスピッツによる1994年の作品。疲れたら猫のように甘えて、眠りたい夜だってある。そんな気持ちを、鮮やかなエレアコの音色に乗せて歌った、隠れた名曲。(渡辺)

B'z

「CAT」

夜毎 ニャオニャオうさをはらして
ミルク色の夢をごらんよ
そして僕に戻れ

「CAT」 B'z 作詞/稲葉浩志 (1997)
1997年リリースの『SURVIVE』収録。気分屋な猫の生態に、女性の心理と行動を重ねたミドルテンポのラブソング。稲葉浩志による猫愛溢れる歌詞へのアンサーか、犬派の松本孝弘が“ミャオーン”と聞こえるギターフレーズを用意している。愛が過ぎます。(渡辺)

山口百恵

「猫が見ている」

今夜も灰色の猫が
だまって私を見ている
トタン屋根に寝そべって
のぞいてるわ 私の心を

「猫が見ている」 山口百恵 作詞/小谷 夏 (1979)
LAで録音された1979年発表のアルバム『L.A.Blue』に収録。サウンドは百恵流・AORだが、歌詞では、「甘い流行に流されてはしゃぐなよ」とトタン屋根の上から、猫が彼女をにらみつける。作詞の“小谷夏”は演出家、久世光彦の筆名。猫の魔眼力!(松永)

モーニング娘。'16

「セクシーキャットの演説」

セクシーキャットになれたら
夜中もふざけてじゃれあったりしたい
寂しい夜の匂い

「セクシーキャットの演説」 モーニング娘。'16 作詞/つんく (2016)
モーニング娘。の62枚目のシングル。猫は自らの愛くるしさを把握し、自分をかわいく見せる計算式を持つ。しかしその一挙一動を、ピュアな行動だと信じている人間もいる。そんな猫(アイドル)の絶妙な心理を推測し歌にしたつんく♂さん、さすがです!(渡辺)

黒猫同盟(小泉今日子/上田ケンジ)

「にゃんこの哲学」

にゃんこ にゃんこ にゃんこ かしこいな
にゃんこ にゃんこ にゃんこ ぼくのにゃんこ
自分の名前を知ってます

「にゃんこの哲学」 黒猫同盟 作詞/上田ケンジ (2024)
小泉今日子と上田ケンジによる音楽ユニット〈黒猫同盟〉の最新猫ソング。小泉のPodcast用に楽曲が必要だったことと、お互いに黒猫飼いだったことから結成。ポール・ギャリコの本『猫語の教科書』(ちくま文庫)と併せて、“猫の哲学”を学びたい。(松永)

矢野顕子

「湖のふもとでねこと暮らしている」

とどいた手紙
読んでほしいと ねこが甘える

「湖のふもとでねこと暮らしている」 矢野顕子
作詞/矢野顕子、宮沢和史 (1991)
音楽家として尊敬する忌野清志郎作詞の「山のふもとで犬と暮らしている」のアンサーソングとして、1991年発表『Love Life』に収録。尊敬を集めながら自由に見えた清志郎を、少しだけ猫に譬えている感もある。なお矢野自身はNYで猫と暮らしている。(渡辺)

東京事変

「黒猫道」

退いた退いたほーらオレサマのお通り
“不吉。”と、嫌われて丁度好い
かまうなよ人間関係

「黒猫道」 東京事変 作詞/椎名林檎 (2007)
歌唱法はシャンソン風。変幻自在に変わる曲調は、よく動く仔猫の瞳のようで、テクニックを重視するこのバンドならでは。自らの所属事務所を〈黒猫堂〉と名づけるほど、愛猫家である椎名林檎。歌詞には、我が道を行く黒猫の、孤高な気高さがある。(渡辺)

クレイジーケンバンド

「猫」

まわる猫の目のように
悲しみだけが猫滑り

「猫」 クレイジーケンバンド 作詞/crazyken (2008)
CKB横山剣の一途な恋をもてあそぶ、あのコは性悪猫?歌い出しの「猫猫みたいなコ」という言葉の響きは、猫を呼び寄せるおまじないみたいに聞こえる。狡猾ですばしっこい猫をとらえきれない悲しみを表現した「猫滑り」に猫文学賞をあげたい。(松永)

cero

「Double Exposure」

原子炉のように喉を鳴らす猫と
夢の記憶 辿るあなた

「Double Exposure」 cero
作詞/髙城晶平 (2018)
2018年のアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』の収録曲。楽曲のテーマからは関係のない場所に猫が登場する。しかし、猫を撫でるときに聞こえる“喉ゴロゴロ”を生命の原子炉に譬えたその描写は、猫飼いである髙城晶平ならではの、秀逸な観察眼。(松永)

BUMP OF CHICKEN

「ガラスのブルース」

ガラスの眼をした猫は唄うよ
大きな声で りんりんと

「ガラスのブルース」BUMP OF CHICKEN
作詞/藤原基央 (1999)
1999年の『FLAME VEIN』収録。気高くも隠しきれない愛らしさを併せ持つ、猫の鳴き声やヒゲの揺れを“りんりん”と表現した藤原基央。もちろん自身も愛猫家で、独自の視線が窺える。ライブの際にファンの合唱が起こるほど人気の猫ソングでもある。(渡辺)

柴田聡子

「心の中の猫」

さびしむし楽しむし
腹に乗る膝に乗る
風呂のふたに寝そべる
心の中 猫が居る

「心の中の猫」 柴田聡子 作詞/柴田聡子 (2019)
2019年のアルバム『がんばれ!メロディー』に収録された、小気味の良いリズムとブルージーなギターが印象的な一曲。亡き愛猫との思い出を、ここまでポップに歌えるのは、一緒に暮らした光景や、温もりが今も鮮やかに残っているからではないだろうか。(渡辺)
No.1017「猫になりたい。」ポップアップバナー