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トートバッグをお土産に。カリフォルニアの本屋〈グリーン・アップル・ブックス〉〈ファミリー〉

老舗の〈シティ・ライツ・ブックストア〉しかり、〈モーズ・ブックス〉しかり、カリフォルニアのいい本屋には昔からトートバッグがあります。ここで紹介する2軒は、歴史もタイプも異なりますが、地元の人たちに愛され、観光客が訪れてもきっと好きになる、そんな本屋。もちろん、トートバッグもお土産として買って帰れます。

photo: Yoko Takahashi(SF), Sarah Soquel Morhaim(LA) / coordination: Tamaka Takefushi(SF), Aya Muto(LA)

GREEN APPLE BOOKS(サンフランシスコ)

サンフランシスコにある、古書をメインに扱う歴史ある書店〈グリーン・アップル・ブックス〉。現在は、長年店員を務めていたケヴィン・ハンサンガーほか2人の仲間が店を創業者から買い取り、共同経営者として運営している。イーブックの台頭によりカリフォルニアでも本の業界は厳しいと言われるが、ケヴィンはこう語る。
「80年代だって、〈ボーダーズ〉や〈クラウン〉など大手チェーンとの競争が大変だったからね」

それでも生き残った〈グリーン・アップル〉の強さは歴史とバイヤーたちのセレクトの努力にあるが、同様に重要なのは接客と言う。
「本屋は時代によって求められるものが違うから、終わりのないプロセスとも言える。多くのことはお客さんから教わるので毎日が学びの連続。だから、本や作家の知識よりも、しっかり接客できることがなにより重要なんです」

古本をメインとして扱う以上、入荷のコントロールはできないが、顧客との関係性は自分たちが作っていくもの。だからこそ、地元のコミュニティも大切にしている。
「開店当時から通い詰めてくれた人たちは親となり、いまではその子供たちが通うようになっています。そういう地元のコミュニティを大事にすることが、この商売を長く続けていく秘訣ですね」

【成功の理由】

・知識よりもまず丁寧な接客を心がける。
・お客さんから学ぶ姿勢を忘れない。
・地元のコミュニティを大切にする。

アメリカ〈グリーン・アップル・ブックス〉オリジナルのトートバッグ

FAMILY(ロサンゼルス)

一方、ロサンゼルスの〈ファミリー〉は新世代の本屋として注目を浴びている。自分たちの本屋について、オーナーのデイヴィッド・クラマーは語る。
「時間の止まったようなスペースにはしたくなかった。だから昔のいい本が並んでいる古本屋ではなく、新刊を扱うお店にしたんです。それは今の作家たちを資金的にサポートすることにも繋がります」

棚はセクションをしっかりとは設けていない。例えば、ウィリアム・エグルストンの写真集の横にフランスのZINEが並んだりもする。
「その2つには共通項があるんだよ、というメッセージが発信できるし、アートにしか興味のない人が小説を手に取るかもしれない」

〈ファミリー〉ではスパイク・ジョーンズやマイク・ミルズなどがリーディングやスライドショーを行っている。2011年6月にはリニューアルして、奥にギャラリースペース、そして自分たちで出版部門を持つためのオフィスも設けた。

「最近読んだ新聞の記事に、新しい本屋はブックストアとは呼ばず“literary environment”、つまり文学的環境とでも呼ぶような場所になると書いてあった。本屋なのに本を売る場所ではなく、ほかの何かで生計を立てる。モノを売るだけじゃなく、スペースがあるならバンドにライブをしてもらい、人の目につく壁があったらそこでアートショーをやればいい。

これまでも自分たちでZINEを作ったり、70〜80年代の絶版になった犯罪小説を共同で再出版したり、〈PAM〉や〈SUPREME〉といったブランドとイベントをやったりと、常に一定の形を持たないスペースとして機能してきました。だから単にインディーズブックストアと呼ばれると違和感があります。

ネット時代になり本屋はどんどん崩壊しているけど、物質的にスペースを持つことは本当に力強いこと。過去のどんな重要なムーブメントをとってみても、ヘッドクォーターと呼ばれる場所が必ずあります。人々が集まれる場であること、何かをリアルタイムに体験でき、影響を与える場でありたいですね」

【成功の理由】

・ネットではなく実店舗で本屋を営業する。
・モノを売るだけの場所として考えない。
・本棚はセクションを分けて作らない。

アメリカ〈ファミリー〉オリジナルのトートバッグ