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俺のカチョエペペ。北参道〈コンヴィヴィオ〉の場合

北参道のリストランテ〈コンヴィヴィオ〉では、開業時からのスペシャリテとしてカチョエペペを提供し続けている。なぜカチョエペペを?コースの一品としての作り方は?辻大輔シェフに話を聞いた。

photo: Kazuharu Igarashi / text: Kei Sasaki

辻大輔シェフ
辻大輔シェフ。イタリアではトスカーナ、ミラノで修業。〈新宿髙島屋〉にボッリートやラザニアを提供するカジュアルイタリアン〈YUKA伊〉も出店し、イタリア伝統の味をさまざまな形で伝える。

国内のイタリア料理店での修業を経ず、20歳のときに料理経験ゼロでイタリアに渡ったというユニークな経験を持つ辻大輔シェフ。カチョエペペとの出会いもイタリアで、発祥の地・ローマではなく修業先のトスカーナだった。

「パスタは、うどんのように太いトスカーナ伝統の生パスタ・ピーチでした。麺はもちもちで、酸味を感じるチーズもインパクトがあり、これは旨い!と、驚いたのを今も覚えています」

辻シェフがカチョエペペを提供し始めたのは2009年。〈コンヴィヴィオ〉をオープンする前、渋谷のリストランテ〈ビオディナミコ〉で開業時のシェフを任されたときからだ。

「せっかくイタリア料理を仕事にしているのだから、パスタで看板料理を作りたい。そう考えたとき、シンプルで、誰が食べてもわかりやすくおいしくて、実は作るとなるとちょっと難しいカチョエペペが頭に浮かんだのです」

イタリアでもカチョエペペはトラットリア(食堂)の料理で、リストランテで出しているところは少ない。郷土料理を洗練させたコース料理の一品として供するならどんなスタイルがいいか。考えてたどり着いたのが、今の形だったという。

フェットチーネのカチョエペペ
「フェットチーネのカーチョ・エ・ペペ」。濃厚なソースをまとった幅広パスタに、食感を残したペコリーノ・トスカーノを添えて。月替わりランチコース5,500円~の一品。

トスカーナのニュアンスを加えた進化系

「まず、自家製の生パスタを使うこと。生パスタなら、パスタそのもので、店ならではの個性を表現できるので。具材はなく、パスタとシンプルなソースの相性を味わって頂く料理なので、ソースをしっかりまとう平打ちのフェットチーネにしました」

チーズは辻シェフにとっての「イタリアの故郷の味」であるペコリーノ・トスカーノ(トスカーナ産のペコリーノチーズ)に加え、旨み、コクのあるグラナパダーノの2種を使用。さらに少量の鶏のブロード(だし)を加えて、複雑かつ重層感がある、リッチな味に仕上げている。

最近は、フェットチーネの代わりに自家製のスパゲッティで提供することも多い。フェットチーネと同じ、卵を使った生地で、パスタカッターを使わず、手切りにすることで食感にニュアンスを出すのだとか。細長い麺だが、乾麺のスパゲッティとは違う、リストランテの味になる。

自家製のスパゲッティのカチョエペペ
現在は、自家製のスパゲッティで提供することも多い。

「カチョエペペは10年以上作り続ける、思い入れのあるパスタ料理なので、ぜひ一度、店で味わっていただきたいですね。ご自宅で作られるときは、スパゲッティをフェットチーネにするだけでも、おいしさが変わるので、ぜひ試してみてください。シンプルだからこそ、材料選びやちょっとした作り方の差で味が変わるので、自分好みの味にしやすい。ローマ人以外のイタリア人も、そのようにして楽しんできたはずです」

【レシピ】〈コンヴィヴィオ〉直伝カチョエペペの作り方